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第十二章 扮装?変装? その2
データによると松井帆菜は
それなりの企業に勤める、普通のOLらしかった。
「あんなチンピラに、ふつうのOLさんか。
なんだかおかしな組み合わせやな。」
「そうですねえ。」
タクシーで彼女のマンションに向かう途中、二人は小声で会話している。
サングラスをかけてオールバックにしているアキヒトは、
コワモテのお兄さんに化けていた。
それに対して、ボーダーのカットソーに
黒のパンツを合わせているハルカさんは、
OLの休日スタイルのようだ。
彼は見た目には二十代半ばの女性に見えるし、
人をまったく警戒させない顔をしている。
タクシーの運ちゃんが
時々心配そうな目で
バックミラー越しにハルカさんを見ているが
どちらかというと、ビビッているのはアキヒトのほうだった。
『アッキーは何もしゃべらんでええよ。僕が何か振ったら頷いてくれれば。』
『分かりました。』
たったそれだけの打ち合わせなのに、心臓がドキドキする。
ハルカさんは一体何をするつもりなのか?
楽しみでもあり、怖くもあった。
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