第十一章 アメとムチ

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第十一章 アメとムチ

「裏やれよ。倍は稼げるやろ。」 「嫌や。うちは翔喜としかしたくないねん。」 翔喜の冷たい態度に、帆菜が泣きだした。 すかさずヘルプのホストがハンカチを差し出すが 肝心の翔喜本人は冷たい表情のままだ。 「裏って何ですか?」 またアキヒトが小さな声で聞くと、今度はレイジュが耳打ちした。 「Hありの非合法のヘルスのことや。」 「えーっ!」 思わずアキヒトが叫びそうになり、ハルカさんとレイジュに 「しーっ!」と制される。 「女の子何人もソープに沈めたり デリヘルで働かせてボトル入れさせてますからね、あの人。」 レイジュがボソッと呟いた。 「ああやって強気に出ると女の子は 自分が至らないんじゃないか、悪いんじゃないかなって思って どんどんボトル入れんねん。 その代わりボトル入れたときは、最上級のお姫さま扱いやけどな。」 まさにアメとムチの使い分けである。 「俺には無理です、そんな事出来ません。」 アキヒトがため息混じりに言うと、ハルカさんが微笑んだ。 「うちらは地道に稼ごうな、アッキー。」 「はい。」 素直に頷くアキヒトを、ハルカさんがぎゅっと抱きしめた。 みるみる赤くなるアキヒトを見て、 「ふふ、可愛い。」 とハルカさんが言う。 「みんなの前ではやめてくださいよ!」 アキヒトが抗議すると、 「二人っきりならええの?」 と、色っぽく聞かれる。 「もちろん、ええに決まってます。」 関西弁がうつって少し気恥ずかしいが、本心だった。 二人きりなら、いくらでも付き合うつもりである。 そんな二人のやり取りを見て、レイジュがくすっと笑う。 「自分ら仲ええなあ。 あ、翔喜さんが怖い顔でこっち見とるで。」 翔喜は帆菜のテーブルについているはずなのに 視線を感じてアキヒトが振り向くと 商売を忘れて、ものすごい形相で睨みつけてくる顔があった。 「怖っ!ハルカさん!人前ですって!!」 なおもベタベタくっついてくるハルカさんに アキヒトが言うが 「わざとやってんの。アイツどうするかなーと思ってな。」 と、アキヒトにくっつきまくりながら 悪魔のように魅力的な微笑みで返してくる。 可愛いけど・・・・・・コワい! アキヒトは生唾を飲み込みながら、翔喜の様子を伺っていた。              恋して天使?それとも悪魔? VOL5へ続く♪
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