第三章 脅迫

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第三章 脅迫

「さ、どうする?」 ニヤリと笑うハルカの前で、宇津井が土下座する。 「金は返す・・・・・・だから今日のところはこれくらいで勘弁してくれ。」 薄汚れたヴィトンの財布から、5万円ほど抜き出して 宇津井はハルカに差し出した。 「まさかお前、こんなはした金でヤクザとカタ付けられるなんて 思ってへんよな?」 金をポケットにしまったあとで 半開きの目で宇津井を見ながら囁くと、 ハルカはアキヒトの方向を向いた。 「千里、アレを出せ。」 アキヒトは黙って、一枚の書類の入ったA4大の封筒を差し出した。 「この書類にサインしろ。今すぐや。」 封筒の中身を確認した宇津井が、 コピー用紙のように蒼白な顔色になる。 「二千万円の借用書?そんな無茶な。」 「飲まれんか?僕に対する慰謝料と借金を合わせたら安いもんやろ。 それともやっぱり止めるか? ならこの5万円返す代わりに、今までお前が僕や他の女どもにした事を 全て帆菜ちゃんにお伝えするけど、それでええか?」 「!?」 しばらく重い沈黙が続くが、 最後は観念して宇津井が書類にサインをした。 「おおきに。」 ハルカは書類を封筒に戻すと、 投げキッスをして松井帆菜の自宅を後にする。 アキヒトも彼の後に続いた。 宇津井と松井帆菜は、呆然とした顔で二人を見送っていた。
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