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第五章 結果報告 その2
後日桜井組を訪問し、千里のスーツを返却しに行った二人は
再び事の顛末をなゆかと千里に説明していた。
「ここの組名義で宇津井から二千万円の借用書にサイン、もらってきたわ。」
と言って、A4の封筒の中身を見せると
千里がクスクスと笑った。
ちなみに、本当に組名義だと公的に回収できないので
<組名義の信販会社の借用書>という形になっている。
「どうせ返せへんものに、よくサインなんか出来ましたね、あの男。」
千里は半ば呆れたように言った。
「まあええねん。これがあればもう二度と
うちの店や僕らの前に顔は出さへんやろ。その為のお守りやから。」
と、ハルカはにこやかに言い、書類を渡す。
「千さんにこれ、預けるわ。なんか利用したい時は使ってよ。
要らなきゃそのまま金庫にでも入れといてくれたらええ。」
「承知いたしました。」
千里が微笑みながら、それを受け取った。
「ねえ、組を継ぐ気は本当にないの?ハルちゃん。」
なゆかが残念そうに言う。
「やっぱりハルちゃんが頭にはふさわしいと思うんやけど。」
「なゆか、それは千さんに失礼やで。」
ハルカはにっこりと笑いながら、ピシャリと言った。
「それにせっかく副店長になれたんや。この地位は譲られへん。
新しい支店が出来たら支店長任される予定やしな。」
「・・・・・・そっか。」
返事は分かっているけど、言ってみた。
そんな表情だった。
「アキヒトさん、ハルちゃんの事をよろしくお願いします。」
なゆかと千里が揃って頭を下げた。
アキヒトが恐縮する。
「この子がうちに付き合ってる人を連れてきたの、初めてなんです。
ようやく吹っ切れたかと思うと・・・・・・。」
そう言いながら、なゆかが涙ぐんだ。
アキヒトはなゆかとハルカが
二人とも千里の事を好きだった事を思い出す。
弟の惚れていた男と結婚したのだ
姉としても複雑だったに違いない。
「うん、もう大丈夫やから。
だから、二人とも心配せんでや。」
ハルカは二人に向かって言い、黙ってアキヒトの腕を取った。
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