第五章 結果報告 その2

1/1
前へ
/11ページ
次へ

第五章 結果報告 その2

後日桜井組を訪問し、千里のスーツを返却しに行った二人は 再び事の顛末をなゆかと千里に説明していた。 「ここの組名義で宇津井から二千万円の借用書にサイン、もらってきたわ。」 と言って、A4の封筒の中身を見せると 千里がクスクスと笑った。 ちなみに、本当に組名義だと公的に回収できないので <組名義の信販会社の借用書>という形になっている。 「どうせ返せへんものに、よくサインなんか出来ましたね、あの男。」 千里は半ば呆れたように言った。 「まあええねん。これがあればもう二度と うちの店や僕らの前に顔は出さへんやろ。その為のお守りやから。」 と、ハルカはにこやかに言い、書類を渡す。 「千さんにこれ、預けるわ。なんか利用したい時は使ってよ。 要らなきゃそのまま金庫にでも入れといてくれたらええ。」 「承知いたしました。」 千里が微笑みながら、それを受け取った。 「ねえ、組を継ぐ気は本当にないの?ハルちゃん。」 なゆかが残念そうに言う。 「やっぱりハルちゃんが頭にはふさわしいと思うんやけど。」 「なゆか、それは千さんに失礼やで。」 ハルカはにっこりと笑いながら、ピシャリと言った。 「それにせっかく副店長になれたんや。この地位は譲られへん。 新しい支店が出来たら支店長任される予定やしな。」 「・・・・・・そっか。」 返事は分かっているけど、言ってみた。 そんな表情だった。 「アキヒトさん、ハルちゃんの事をよろしくお願いします。」 なゆかと千里が揃って頭を下げた。 アキヒトが恐縮する。 「この子がうちに付き合ってる人を連れてきたの、初めてなんです。 ようやく吹っ切れたかと思うと・・・・・・。」 そう言いながら、なゆかが涙ぐんだ。 アキヒトはなゆかとハルカが 二人とも千里の事を好きだった事を思い出す。 弟の惚れていた男と結婚したのだ 姉としても複雑だったに違いない。 「うん、もう大丈夫やから。 だから、二人とも心配せんでや。」 ハルカは二人に向かって言い、黙ってアキヒトの腕を取った。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加