第十七章 あなたを守りたい

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第十七章 あなたを守りたい

「それにしても怖かった。」 帰り道、店の影が見えなくなった頃に アキヒトが長いため息をつきながら言った。 「ハルカさんが刺されるんじゃないかって思いましたよ。」 「刺されてたよ、多分。」 彼がボソッと言う。 「アッキーが守ってくれへんかったら、刺されてた。」 この顔が傷だらけにならなくて、本当に良かった。 そう心から思いながら、 アキヒトはハルカさんの顔に両手をかけた。 「こんな俺でも役に立って良かったです。」 武道の経験もあるし、この人は強い人だ。 借金取りの時もそうだったが、 本当は、自分など居なくてもきっと大丈夫なんだと思う。 『守りたい』なんて大それた事を思って恥ずかしかったけど いざと言う時に無我夢中で反射的に身体が動いた自分に びっくりしていた。 やっぱり俺はこの人が好きなんだ。 彼の顔をアキヒトはじっと見つめた。 いつ見ても、何度見ても見飽きる事の無い 端正な顔とすべすべした肌。 この顔を少しでも傷つけることなど許せなかった。 「ありがとう、アッキー。好きやで。」 そっとキスをされる。 人前ではやっぱり恥ずかしいけれど 嬉しくてアキヒトはハルカさんを強く抱いた。 「俺も好き。誰にも触らせたくない。」 「アッキー。」 「金ないし、技術もまだまだだし、甲斐性もないし シャンパンタワーみたいな凄いものなんか見せてあげられないけど それでも俺、ハルカさんが好きです。」 今度はアキヒトから、キスをした。 ハルカさんがまた泣いていて、 その顔が可愛いなとアキヒトは思った。
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