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第九章 特別扱い
「楽しんでる?」
ハルカのテーブルにやってきて、二人を引き止めたあと
しばらく談笑して落ち着いた時に
翔喜が聞いてきた。
「楽しんでます。」
「楽しんでるで。」
ハルカとアキヒトは二人同時に返す。
“いろんな意味でね。”と思っているのはナイショである。
「二人ともホストクラブは初めて?」
「そうやねん。」
ハルカが返した。
「何が名物なの?面白いもんとかある?」
「そうやなあ。」
翔喜は考え込んだ。
「シャンパンタワーとか見たことある?」
「従姉妹の結婚式でなら。」
アキヒトが言うと、翔喜は小馬鹿にしたように笑った。
感じ悪いコトこの上ない。
「普通はそうやろうな。ここのクラブの中でグラスを積んで
シャンパンタワーを作るんやけど、
そうやなシャンパンを最低10本は使うかな。」
「へえー。」
シャンパンともなれば1瓶15000円ではきくまい。
最低5万~10万としても100万弱はかかることになる計算だった。
「豪華やねえ。グラスに照明が当たったら綺麗やろうね。
一度、見てみたいなあ。」
ハルカが翔喜に流し目をくれていた。
色っぽい。
“ハルカさん!そんな目で見ちゃダメ!勘違いするじゃないか。”
とアキヒトは内心ムッとするが
あくまでもお芝居で、本気ではないのだからと自分に言い聞かせる。
翔喜が生唾を飲み込むのが、アキヒトにもわかった。
「でも特別なイベントの時にしかやらないんだよね?
お客さんが誕生日のお祝いしてくれる時とかって
聞いたことあるよ。いつか見てみたいな。」
見られたら嬉しいけど、無理だよね・・・・・・
と言った表情で
翔喜に向かって微笑むハルカはまるで女優だった。
その顔を見て、翔喜は魂を吸い取られたような顔になる。
と、しばらく黙ったあとで彼が口を開いた。
「ええよ。特別に俺が見せてやるで。」
翔喜が立ち上がりながら言う。
「え?」
ハルカが驚いた表情をみせた。
「ハルカ姫の来店記念に、ここは一つシャンパンタワーを見せたるわ。
ちょっと!」
フロア係を呼んで、翔喜がなにやら耳打ちする。
呼ばれた彼は驚いた顔で、何度も確認した。
「本当に、翔喜さんのおごりですね?」
「おう。せっかくや、来てくれたお客さん全員に振舞うで。」
頼まれた彼は、びっくりした顔をして
ハルカと翔喜の顔を何度も見比べていたが、
翔喜に急かされるとすぐ支度に入った。
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