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乾いた風が横断歩道を渡る寺島くんと私を追い越していく。空が風に翻るようだった。
「もうすぐ5月だな」
囁くような寺島くんの声が前から聞こえた気がしたけれど、私は何も聞こえなかったふりをした。寺島くんはそんな私を面白くなさそうに振り向いて、目を細めて薄く笑った。
「でさぁ。俺、まだ答えもらってないんだけど」
まるで告白した相手に答えを求めるようなセリフだけど、彼が求めているのはそんな甘やかな話じゃない。「ゆうれい話」だ。
「お姉ちゃんに聞いてみる……」
バカみたいな私の回答に寺島くんは薄笑いどころかペッラペッラの笑顔を白い顔に浮かべた。
「お前のお姉ちゃんずーっと家に帰ってこないじゃん。どうやって聞く気だよ」
「Facebook……」
寺島くんは、ふーん、と冷たい声を放って歩き出した。
「まともに話ができないような相手より、俺の幽霊の方が有意義だと思うけどね」
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