第十章 嵐のあと

1/1
前へ
/18ページ
次へ

第十章 嵐のあと

あたりがすっかり暗くなり、 帰宅しないハルカを探しに来た千里が 道場に虫の死骸のように転がっている彼を見つけた。 はじめは死んでいるのかと思ったらしい。 血液と体液の混ざった異臭が鼻につく道場で 静かに横たわっているハルカを見つけたときの千里は 今まで見たことも無いほどの、 半狂乱の様相を呈していた。 「アイツにはそんな姿、見られたく無かったんやけどな。」 しかし、そうも言っていられないくらい ハルカは肉体的にも精神的にもボロボロだった。 「千里が迎えに来た時、恥ずかしさと情けなさで泣いたわ。 僕の体の傷と出血とその他もろもろの匂いで 千里は何があったかすぐに理解したよ。 察しは昔から良かったからな。」 ハルカを見つけた千里も泣いていた。 「・・・・・・私が付いていながら、申し訳ございません。」 壊れ物に触れるように、抱かれる。 ハルカはその時、大の男が泣くのを初めて見た。 その足で組で世話になっている病院へ連れて行かれると そこで性病の検査と、処置が行なわれた。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加