第四章 前哨戦 その2

1/1

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ

第四章 前哨戦 その2

ハルカさんの家の風呂は、アキヒトのボロアパートとは 比べ物にならないくらいキレイで広い。 二人入るのは余裕で、 羨ましくなると同時に 今まで何人がこの風呂にハルカさんと入ったんだろう?と考える。 「どうしたん?アッキー。」 黙り込んだアキヒトに、ハルカさんが尋ねた。 この気持ちは嫉妬なのだろうか? 「・・・・・・ハルカさんの最後の男になりたいです。」 「え?」 浴槽の中で、アキヒトはおもむろにハルカさんを抱きしめた。 そのまま深く口付ける。 「ハルカさんが誰のことも思い出さなくなるくらい 愛したいです、俺。」 「アッキー。」 「こんな気持ちになったのは初めてです。 まさか男の人を好きになるなんて、思ってもいませんでした。」 「だよねぇ。」 クスクスとハルカさんが笑った。 「僕、最初はアッキーの前では女の子のふりしてたし。」 「え?」 「ほら、関西では自分のこと“うち”って言うやんか。あれ男は言わないから。」 言われてみればそうだ。 「アッキーが僕の事好きになったかな?と思ったときに ずっと際どくからかってたのも気を引くためやし。」 「え?俺最初から狙われてたの?」 「うん。一目惚れだったから。」 しれっとハルカさんに言われて、びっくりした。 「俺も一目惚れでしたよ。 出会った最初からハルカさんしか見えてない。」 なんだよ、お互いに一目惚れだったんじゃないか。 なんだか嬉しくてぎゅっと抱きしめ、またキスをする。 幸せの味がする、とアキヒトは思った。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加