第六章 告白の序章

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第六章 告白の序章

「アッキーには僕の全部を知って欲しい。」 充分温まったあとで、湯船から上がる。 ハルカはアキヒトと向き合った。 「俺も、ハルカさんを全部知りたい。訳ありの過去も全部。」 アキヒトも立ち上がる。 「知ったら僕を抱けなくなるかもしれないよ?」 ハルカはアキヒトの目を見ながら言った。 それは本気だった。 今まで何人かに打ち明け、受け入れてくれた男もいたが どうしても受け入れられずに、ハルカの元を離れた男もいる。 ハルカの責任ではないけど、あまりにも重い過去。 もしくは反対に、彼がオトコである故に その出来事を軽く見る男もいた。 宇津井なんかがその典型的な例だ。 だからハルカをAVに売り飛ばすことが出来たのだ。 アキヒトを愛している。 だからこそ伝えたくない、だけど愛しているからこそ知って欲しい。 ハルカは迷っていた。 「ねえ、もしハルカさんが何らかの病気を持っていたとしても 知った上で出来る方法で愛したいし そうでないなら俺はたいていの事は気にしません。 たとえ千人くらい男を知ってても俺は大丈夫です。」 彼の思いつく限りの想像力を働かせて言ってくれたのだろう。 誠実な言葉に、涙ぐみそうになった。 「言っておくけど、病気は無いから。安心して。」 ハルカが言うと、アキヒトはあからさまにホッとした顔をした。 「・・・・・・良かった。実はAIDSとか言われたらどうしようって、 一瞬思ったんで。」 この、正直者!と思うが、彼を責める事はできない。 実際に彼は何度も性病の検査を受け、その都度安心していた過去がある。 その理由を告白するのが辛いだけだった。
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