舞踏会

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舞踏会

さて、舞踏会にはお姫様も踊ります。 真っ赤な唐辛子色のドレスを着て、真っ赤な髪に白い真珠の髪飾り。仮面舞踏会だとしても、姫様だということは誰でも分かります。 そして姫様に踊りを申し込むという無謀な男もなかなかいません。 「イケメン好き」で「惚れっぽく」て「面倒くさい女」というのが知れ渡っていますから、イケメンじゃなくても、どんなに歳が離れていても、男というのはうぬぼれやが多いようで「万一、姫様に気にいられたら」と二の足を踏んでいるか、さっさと別の女性を選んで踊りだすか。 もっとも、姫様が自分から申し込めば断るなんてことはできませんけど、さすがに姫様もプライドがあって、自分から申し込むようなことは今のところしてません。 誰も姫様と踊ろうとしない中、異国の服を着た男が近づいてきました。上から下まで真黒の男です。髪も黒く、目も黒く、まるでカラスのようにつやつやとした黒く光るマントをなびかせて、姫様に近寄って踊りを申し込んできたのです。 「姫様、私と踊っていただけますか?」 真黒な瞳に見つめられて、くらくらっとしてしまった姫はもちろんうなずいて一緒に踊りだしました。 姫様と踊るなんて無謀なことをする男は誰なんだろうと、他のものは男も女も気になって、ちらちらと見るものですからダンスどころではなく、足を踏んづけたり、ぶつかったり。 そんな中を姫様と謎の黒い男は、するすると軽やかに踊っていきます。 曲が終わり、気がつくと姫様は侍女のハナの横に立っていました。 「姫様、大丈夫ですか?」 「え?ああ、ハナ」 「さっきからボーーっとして。」 「あの、あの人はどこに?」 「あの人って?」 「私と踊ってた人よ。真黒の瞳の。」 「さあ。私は見てませんけど。」 「探して頂戴、お願いっっ。」 「探すって、どんな人なんです?黒い瞳だけじゃあ・・・。姫様、夢でも見てたんじゃないでしょうね。」 「さすがに私も踊りながら寝るほど器用じゃないから。」 「姫様なら、それくらいはできそうですけど。」 「なんかいった?」 「いえいえ、なにも。では、黒い瞳の殿方を探してきます。」 ハナは姫様がまた面倒なことを言い出さないうちにと、さっさと部屋を出て行った。 「適当にその辺で時間を潰してから戻りますか。」 そう、ハナは黒い男を見てたけど知らないふりをすることにしてたのです。
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