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赤い星空
そのあと、お城ではトンガラシ姫が「赤いオパール」をこっそりと持ち出そうとしていた。踊っているときに、「この国にあるという『赤いオパール』を一目みたい」と耳元でささやかれて、おもわず「あとでお見せします。」なんていってしまったからだ。
侍女のハナがいては面倒なので、うまく追っ払って「赤いオパールの入っている箱」を持ち出した。ちらっと中を見ると、たしかに中には赤くて大きな卵のようなものが入っていた。
「大きな卵くらいあるってお父様が言ってたけど、本当なのね。」
箱を抱えてお姫様は駆け出した。
中庭の噴水のあるところに行くと、茂みから彼が出てきた。
「姫様、本当にもって来てくれたんですね。」
「ええ、この中に・・・。」
といったか言わないかのうちに、目の前が暗くなって気を失ってしまった。
気がついた時には、見たことも無い部屋のベッドに寝かされていた。
「わたし、どうしちゃったのかしら・・・。それに、ここは一体どこ?」
額にかかる赤い髪の毛を、手で後ろに流して起き上がってみると部屋には
他にも人がいた。こちらに背を向けて、なにかを一心に集中してやっているようで、時々「うーん、これじゃないのか」「ああ、これだな」とかブツブツ言っている。
キレイなプラチナブロンドに赤いマントを羽織っているので、舞踏会で踊った黒髪の彼と違うことは一目瞭然だった。他に話しかける人もいないので、おそるおそる近寄って声を掛けてみる。
「あの、ここはどこですの?あなたは、どなた?」
「ああ、もぉちょっとだから静かにしていてください。」
うるさそうにちらっと顔を上げて姫のほうをむいたかと思うと、また何かテーブルの上のものをいじりだした。
普通の姫君なら『まあ、なんて無礼な男!』と憤慨する所でしょうが、なにしろ惚れっぽいので有名なトンガラシ姫。しかもどストライクゾーン。金髪で海のような深いブルーの瞳。ふわっと香るのはミントの香りかシナモンか。
ちょっと爽やか系で刺激的。
「あ、・・・はい。」
と顔を赤らめながらベッドのほうに戻っていった。
窓も無く、ドアは1つ。
城ではないのはわかっているけど、だからといってどうしたらいいのかわからない。
「ハナが心配してるわね。」
そして、自分が王家の宝物の「赤い星空」を持ち出したことも思い出してしまった。
「ああ、どうしましょう。あの男は『赤い星空』を持っていってしまったに違いないわ。」その事に気がつくと途端にトンガラシ姫は真っ青になって、泣き出してしまった。
すすり泣いていると、目の前にキレイなハンカチを差し出す人がいたので思わず受け取って涙を拭いてみあげると、さっきまで一心不乱に何かをやっていたプラチナブロンドの男だった。
「あの、泣くのは止めませんか。パズルも解けたし、よかったら、何か食べますか?」
そういうと、隣の部屋にいってリンゴとクッキーを持ってきた。
「いま、お湯を沸かしてますから。よかったらお茶でも。」
「あ・・・ありがとう。ひっく・・・」
泣きじゃくりながらも、トンガラシ姫はお礼をいった。
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