トンガラシ姫とケチャップ王子

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トンガラシ姫とケチャップ王子

昔々あるところに赤いものが大好きなお姫様がおりました。 庭に植えてあるのは赤いバラ。 畑にあるのは赤唐辛子。 飼っている犬の名前は「ストロベリー」。 季節になって真っ赤になった唐辛子の畑でピクニックをするのが何より好きでした。髪も赤くツンツンとしているので、まるで唐辛子そっくり。 それで誰言うとなく「トンガラシ姫」という名前で呼ばれるようになりましたが、姫様もそれを気にすることはなく逆に面白がっているようでした。 「トンガラシ姫って、なかなかステキな名前じゃない?」 「そうですか?まあ姫様が気にいってるなら問題は無いですよね。」 幼馴染の侍女のハナは半分あきれてましたが、本人が気にしてないなら自分が口を挟むことは無いとおもってました。 「それより聞いてよぉ、私また振られちゃったみたいなのぉぉ。」 「あらあら、またですか。」 そうなんです。お姫様はすごく惚れっぽい上に、あんまりにも積極的すぎるものですから、たいていの相手は段々と姫様をもてあましてしまって結局は 「わたしには、姫様はもったいない」とか 「姫様には、もっと素晴らしい方のほうがお似合いです。」とか言って さりげなくいなくなることが多い。 中には 「ちょっと用がありまして、旅に出ます。」 「親の具合がよくありませんので、国に帰らねば。」 「妹の結婚式に行ってきますので、しばらくお会いできません。」 と言ってそれっきりという男も。黙っていなくなる男も数知れず。 お姫様はイケメンと見ると、それだけで「運命の人だわ。」と思い込むものですから、余計に振られるはめになるわけです。 「で、今度は誰なんです?」 ハナは姫様が振られた話をするのは、もぉ次のターゲットができているからというのを何度も経験済みなものですから、やれやれと思いながら聞いてみました。 「それがね、まだあった事は無いの。でもね、私と同じように『赤い色』が好きって聞いてるから、今度はきっとうまく行く気がするの。ええ、彼こそが運命の人だったんだわ。いままでのは、彼に出会うための練習だったんだわ、きっと。」 いままでも同じ様なことを姫様は言ってたのに、ずっと振られっぱなしということは全然思っても見ないんだなあと、ハナは姫様の前向きなところがうらやましい半分あきれ半分。 「でも珍しいですね、姫様はイケメン好みだと思ってたのに会ってもいない人を好きになるなんて。」 「イケメンに決まってるじゃないのー。だって相手はケチャップ王子よ。」 何の根拠もなく言い切る姫様。 「ケチャップ王子って、どこの国の人ですか?」 「ポモド国っていう海を越えて山を越えた所にあるらしいわ。」 「そんな遠くの王子様に、どうしてまた・・・」 「今度、舞踏会に来るらしいのよ。」 「ああ、また舞踏会ですか。」 「そう。また舞踏会。」 姫様のお父様、つまりこの国の王様は舞踏会を開くのが大好き。なにかと舞踏会を開きます。いろんな国の人を招いて見聞を広めるというのが王様の言い分ですが、みんなは王様がただ賑やかで楽しいのが好きなだけだとこっそり言っていました。
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