28人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
夜が明け、私とクレイドはレオールを外に運び出し、庭の中央に埋め、二人でレオールのお墓を作った。
「師匠が人獣にやられてしまうとは……」
クレイドは呟き両手を合わせる。
「それと、エリーナ。貴方も大したものだ。二人の人獣を倒すとは。流石、師匠のお弟子さんだ」
「いえ……そんな事は……出来の悪い弟子でしたから……」
私は下を向き、呟くような感じで答える。
「そんなことはない。師匠は貴方のような弟子を最後に持つことが出来て、草葉の陰で喜んでいると思う」
「そうだと良いんですけど……」
何て反応して良いのか分からない……。
「ところで、エリーナ。これからどうするのだ?師匠の後を継ぎ、此処を守って行くのかな」
「どうするって……。分かりません……。私にとって、レオールが全てでしたから……」
咄嗟にこれからの事を聞かれても、どう答えて良いのか分からない……。
ただ、レオールを失った今、私は何をどうしたら良いのか、考えることすら出来ないのだから……。
「そうか。それなら、私の基で働いてみないか。私は自警団を組織している。貴方なら活躍出来ると思うが、どうだろう?」
「あの……。どうしたら良いのかな……。分からない……。考えさせて……」
私は突然の誘いに動揺し、しどろもどろになってしまう……。
「こんな状況で突然の誘いで申し訳なかった。私は暫く山の麓の街に滞在している。もし、良かったら、私の所に訪ねて来て欲しい」
「分かりました……」
素気ない返事をする……。
「ここでこのような話をするのも申し訳ないが、出会いがあれば別れがある。いつか貴方は此処を旅立つ時が来るのだ。それは突然訪れるものだ。私は貴方が私の誘いを受けてくれると信じている」
クレイドはそう言い残すと、この場を去っていた。
私は一人、レオールのお墓の前で考え込む。
今まで自分で物事を判断したことがなかった私にとって、今回の決断はかなり大きなものとなる。
私には相談をする人なんてレオールの他にはいないのだから……。
どうしよう……。
働いた事なんてない……。
ただ、クレイドは貴方なら活躍出来ると言っていた……。
私に出来ること……。
何だろう……。
クレイドは私が二人の人獣を倒したことを褒めてくれた。
戦うことなら出来る。
私がレオールから長年学んだことは、戦うためのスキルだ!
クレイドは自警団をやっていると言っていた。
自警団に入ったらどんな事をやればいいのだろう?
それは、クレイドが教えてくれる筈だ。クレイドもかつてはレオールの弟子だった。境遇は私と一緒だ。それなら、私の事、分かってくれるよね。
私にとって悪いことなんて無いよね。
私はレオールのお墓の前で、試行錯誤を繰り返す。まとまらない考えが、頭の中を駆け巡る。
暗闇の中、ただ静寂の中で一人、考え続ける。
どうしたらいい……。
此処に留まるの?
此処にレオールもうはいないよ……。
此処以外の世界を知りたくないの?
外の世界も悪くないかもよ。
もし、レオールが生きていたとしても、遅かれ早かれ、いつかは此処を離れる日が来たのよ。
此処に止まって、何をしたいの?
ただ、レオールから学んだ事を永遠に繰り返すだけの日々を送るの?
それ、とても退屈だと思うよ。
決めた……。
レオール御免ね。私は此処を離れて、暫くクレイドのお世話になることにする。
外の世界がどのようなものか知りたい。レオールから色々と聞いた外の世界を体験したい。
私は夜が明けるのを待たずに、荷物をまとめて、山を降りてクレイド待つ街へと急いだ。
最初のコメントを投稿しよう!