旅立ち

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   夜が明け、私とクレイドはレオールを外に運び出し、庭の中央に埋め、二人でレオールのお墓を作った。 「師匠が人獣にやられてしまうとは……」  クレイドは呟き両手を合わせる。 「それと、エリーナ。貴方も大したものだ。二人の人獣を倒すとは。流石、師匠のお弟子さんだ」 「いえ……そんな事は……出来の悪い弟子でしたから……」  私は下を向き、呟くような感じで答える。 「そんなことはない。師匠は貴方のような弟子を最後に持つことが出来て、草葉の陰で喜んでいると思う」 「そうだと良いんですけど……」  何て反応して良いのか分からない……。 「ところで、エリーナ。これからどうするのだ?師匠の後を継ぎ、此処を守って行くのかな」 「どうするって……。分かりません……。私にとって、レオールが全てでしたから……」  咄嗟にこれからの事を聞かれても、どう答えて良いのか分からない……。  ただ、レオールを失った今、私は何をどうしたら良いのか、考えることすら出来ないのだから……。 「そうか。それなら、私の基で働いてみないか。私は自警団を組織している。貴方なら活躍出来ると思うが、どうだろう?」 「あの……。どうしたら良いのかな……。分からない……。考えさせて……」  私は突然の誘いに動揺し、しどろもどろになってしまう……。 「こんな状況で突然の誘いで申し訳なかった。私は暫く山の麓の街に滞在している。もし、良かったら、私の所に訪ねて来て欲しい」 「分かりました……」  素気ない返事をする……。 「ここでこのような話をするのも申し訳ないが、出会いがあれば別れがある。いつか貴方は此処を旅立つ時が来るのだ。それは突然訪れるものだ。私は貴方が私の誘いを受けてくれると信じている」  クレイドはそう言い残すと、この場を去っていた。  私は一人、レオールのお墓の前で考え込む。  今まで自分で物事を判断したことがなかった私にとって、今回の決断はかなり大きなものとなる。  私には相談をする人なんてレオールの他にはいないのだから……。  どうしよう……。  働いた事なんてない……。  ただ、クレイドは貴方なら活躍出来ると言っていた……。  私に出来ること……。  何だろう……。  クレイドは私が二人の人獣を倒したことを褒めてくれた。  戦うことなら出来る。  私がレオールから長年学んだことは、戦うためのスキルだ!  クレイドは自警団をやっていると言っていた。  自警団に入ったらどんな事をやればいいのだろう?  それは、クレイドが教えてくれる筈だ。クレイドもかつてはレオールの弟子だった。境遇は私と一緒だ。それなら、私の事、分かってくれるよね。  私にとって悪いことなんて無いよね。  私はレオールのお墓の前で、試行錯誤を繰り返す。まとまらない考えが、頭の中を駆け巡る。  暗闇の中、ただ静寂の中で一人、考え続ける。  どうしたらいい……。  此処に留まるの?  此処にレオールもうはいないよ……。  此処以外の世界を知りたくないの?  外の世界も悪くないかもよ。  もし、レオールが生きていたとしても、遅かれ早かれ、いつかは此処を離れる日が来たのよ。  此処に止まって、何をしたいの?  ただ、レオールから学んだ事を永遠に繰り返すだけの日々を送るの?  それ、とても退屈だと思うよ。  決めた……。  レオール御免ね。私は此処を離れて、暫くクレイドのお世話になることにする。  外の世界がどのようなものか知りたい。レオールから色々と聞いた外の世界を体験したい。  私は夜が明けるのを待たずに、荷物をまとめて、山を降りてクレイド待つ街へと急いだ。  
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