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「違うよ、苦笑してただけだ。大村は大法螺を吹いたんだ」
「ハハハ!まあ、どっちにしろトップはトップだもんな、今村は出来るから良いよ。そこへ行くと落合は駄目だ。出来ないから。全く期待外れだ。和を乱す上にこれじゃあサイテーじゃねえか。お互い中日ファンとして全く腹立つよな!」
落合選手はペナントレースが開幕してから絶不調だったのだ。
「あのさあ、開幕してから間もない時期に、今年は良いですねえとか、今年は悪いですねえとか言う目先の結果に囚われてる人間の様に思ってたら駄目だよ。世の中は何か常なる飛鳥川きのふの淵ぞけふは瀬になるってね。落合はその内、打ち出すに決まってる。それに決して和を乱す存在じゃない。君子は矜にして争わず群して党せず、和して同ぜず。落合は偉い人だ」
「えー!教養ぶっちゃって、自棄に肩を持つじゃないか!俺は奴が嫌いだね。あんな奴はあの儘、駄目になりゃあ良いんだ」
啓介は無言の儘、「アナウンサーも解説者も記者もファンもこいつも皆、集団主義で正しく近代化しとらんから落合選手に反感を持つのだ。大体、小人は同じて和せずで真に和する事が出来ず和の意味すら分かってない癖に落合は和を乱してるとか、お前が和について語るんじゃない。こいつ、僕に話し掛けて来たから見所が有るかと思って最初は漱石の奨める個人主義に則って尊重して接してみたんだが、これだから尊重しようにも尊重出来んのだ」と幻滅し虚しくなると、池尾が自分の意見に補足した。
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