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「ハハハハ!今村に挨拶してやるのは俺位なもんだ。だから文句言うな。そんな事よりギターやっとるだろうなあ」と江藤は言いながらいつも通り随意にずかずかと天馬空を行くが如く居間を目指して上がり込んで行く。啓介が、相変わらず不躾な奴だと思いながら江藤の後を付いて行くと、襖と窓が全開になり首を振りながら回っている扇風機が置いてある居間に江藤は入るなり、「昼間の炎天下よりは増しか」と果然、不躾に言いながら額の汗を拭い、「これじゃあ独りでいるのは堪らんだろう。もっと暑くなろうとも女の子と抱き合ってた方が増しなんじゃないのか!寧ろ其の暑さが心地好い位なもんだ。家のかかあじゃ暑苦しいだけだが、アハハ!」と独りで受けて、点いているテレビを見て、「亦、ギターやらずに野球見とったんか!」
「ああ、何せ、天王山だから」と啓介は然も不機嫌そうに言いながら敷居を跨ぐ。
「竜虎決戦か!中日は交流戦で躓いたから今年は駄目だろ!」と江藤は中日ドラゴンズに駄目出しした後、コンビニで買って来た五百ミリリットルの缶ビール二缶と摘みの入ったレジ袋をテーブルの上に置き、ギターケースを座布団の脇に置き、いつも通りテレビの斜向かいの座にどっかと胡坐を掻くと、テレビ画面にスコアが映ったのを見て、「ハハハ!やっぱり負けとる。今年は阪神の逆転優勝だな」
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