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「へへへ、まあ、滅多に見られるもんじゃないからね、精々君達は今の内に喜んでおくんだね。」  木崎は気障にそう言うと、学生ズボンのポケットに両手を突っ込んだ儘、気障に立ち去って行った。 「ちぇっ、相変わらず気取ってて嫌な奴だ。」と金子が不平を鳴らせば、「全くだよ。いつも中日の事を馬鹿にしてさあ。」と内野も不平を鳴らす。啓介も二人に同感ながら木崎の一匹狼的な所に一目置くのだった。そんな啓介に、「今村!嫌な奴が去った所で昨日の大逆転劇をいつもの物真似で再現してくれよ。」と金子が頼めば、「それは良い!今村!僕達を笑わせてくれよ!」と内野も頼む。  啓介は意気揚々と、「よし、来た!」と二つ返事で引き受けると、江川投手を始め谷沢選手や大島選手や宇野選手といった個性的な選手の特徴を掴んだ物真似をお道化たっぷりに次々に演じて二人を笑わし、それに誘われて寄って来た他の同級生達も笑わしてクラスの人気者の地位を不動の物とするのだった。
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