10人が本棚に入れています
本棚に追加
二
1982年と言えば、落合選手が初めて三冠王を獲得した年だ。落合選手は当時から一際、異彩を放つ存在だった。悪く言えば、浮いた存在だった。恐らくプロ野球史上、最も一匹狼という名にふさわしい選手だった。実際、やることなすこと人とは違っていてオレ流と言われ、旧態依然としたプロ野球界に風穴を開けて来た。殊に契約更改の記者会見での言動は毎年ストーブリーグを賑わす風物詩ともなった。それら全ては俗人の観点から見れば、一風変わっていたり奇警だったり型破りだったりしたが、落合選手は世の理不尽で不合理な組織の中にあって道理至極で合理的な考えを持っていた。だから高校時代、上級生のしごきやいびりが過酷な野球部の部活動を休みがちだったし、大学時代もそうで遂には退部し、更には大学自体を中退し、念願のプロ野球選手になってからもプロ野球選手会を脱退した上に前代未聞の名球会入り辞退を宣言し、飽くまでも党を組まない一匹狼の姿勢を貫き通した。選手にとって、とても名誉なことなのに、それを辞退するなんて異例中の異例なことで後にも先にも落合選手だけだ。確かに組織の付き合いというものは煩わしくて無駄で面倒なことが多いに違いなく落合選手にとって名球会入りは会社で言えば、朝礼に参加することに匹敵する位、アホらしくて意味がなく甲斐のないことなのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!