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「なあ、今村、落合ってさあ、和を乱す存在だと思わないか」
「えっ、何で?」
「だって或る時は乙に澄まして或る時は斜に構えてって感じでさあ、一匹狼を気取ってるじゃないか」
「池尾は一匹狼が嫌いなのか?」
「当たり前だろ。一匹狼なんて嫌われる典型的なタイプじゃないか。第一、今時、流行らねえよ」
「けれども、僕は一匹狼が好きだ」
「えー、そんなこと言ってると変わり者扱いされるぞ」
「構わないよ」
「えー!今村ってやっぱり変わってるなあ」
「んー・・・」と啓介は唸りながら、個を軽視し集団を重視するお前らから見ればなと思う。
「まあ、しかし、今村は出来るから良いよ。こないだの英語のテスト、トップだったんだろ」
「ああ、所詮、Ⅱ部さ」
そう馬鹿にしていながら啓介は明るいキャンパスを馬鹿にして態々夜間に進んだのだった。「昼の光に夜の闇の深さが分かるものか」というフリードリヒ・ニーチェの言葉に共感していたから。しかし夜間学生の中にも彼の闇の深さを分かる者なぞ人っ子一人いやしないから、「またあ、気障ったらしく言い切っちゃって・・・」と池尾は愉快そうに言った。「知ってるぞ!大村に聞いたけど答案用紙返してもらってからエライ喜んでたらしいじゃないか!」
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