保護

3/13
1607人が本棚に入れています
本棚に追加
/90ページ
「それがいいと思いますよ。 せっかく彼氏がこう言ってくれてるん ですから、甘えさせてもらいなさい。」 警察官にそう言われて、宮原さんはにこにこと満面の笑みで頷いている。 いやいや、彼氏でも彼女でもないし。 でも、嬉しそうにしている宮原さんの前でそれを言い出せなくて… 「では、我々はここで失礼します。 何かありましたら、すぐにご連絡ください。 巡回も今夜から強化して、犯人逮捕に全力を 尽くします。」 と、お巡りさんは帰って行ってしまった。 「じゃ、当面、必要なものを取りに 行こうか。」 宮原さんは当然のように言うけれど… 「でも、名前しか知らない人にそんな ご迷惑をお掛けするわけには… 」 私が言うと、宮原さんは少し不機嫌な顔をした。 「名前だけじゃない。 由里子さんの勤め先は図書館で、 俺は宮原書店。 俺は、由里子さんが好きな作家さんも 知ってるし、恥ずかしがり屋で穏やかな性格 なのも知ってる。 それにその他の事は、これから知っていけば いいだろう?」 いや、でも… 私が何て断ろうか思案しているのを横目に、宮原さんは携帯から電話を掛け始めた。 「あ、矢島? 悪いんだけど、今から2トン車、俺んちに 回して。 ーーー そう。 あ、やっぱり、コンビニがいいや。 何分で来れる? ーーー 分かった。着いたら電話して。 よろしく。」 2トン車!? 今夜だけお泊まりじゃなくて!? 電話を切った宮原さんは、路肩に止めてあった私の自転車のハンドルを持ち、スタンドを跳ね上げた。 「さ、行こう。」 いや、行こうって…
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!