保護

4/13
1608人が本棚に入れています
本棚に追加
/90ページ
だけど、そこでちゃんと話せれば、いい歳して人見知りなんてしてないわけで… 結局、私は何も言えないまま、宮原さんと共に私の部屋へ来ていた。 「うわっ!! 書庫に住んでるみたいだな。」 宮原さんは驚いた顔で部屋を見渡す。 「でも… うん、やっぱり。」 そう言って、宮原さんは、にっこりと笑った。 「俺と趣味が似てる。」 「えっ?」 「このシリーズもこの作家の本もあれも、 うちにあるよ。 うちにある本は好きに読んでいいから、 どうしても必要な本だけ持って行こう。 で、休みごとに少しずつ運べばいい。」 宮原さんは、ひとりで納得して決めていく。 「食器や家電は、うちのを使えばいいから、 由里子さんがどうしても必要な物だけ、鞄に 詰めて。 着替えとか、化粧品とか。」 「あの… 」 おずおずと私は口を挟む。 「本を除けば、私にはトラックが必要なほどの 荷物はありませんけど… 」 すると、宮原さんの目が点になった。 「ベッドは?」 「えっ?」 「うち、ベッドひとつしかないけど。 由里子さん、俺と一緒に寝る? ま、ダブルだから、俺はそれでも いいけど。」 言われて初めて気づいた。 私は慌てて首をブンブンと横に振った。 それを見て、宮原さんは楽しそうに笑う。 「くくっ だろ? さすがにベッドを2人で歩いて運ぶのは、 なぁ?」 歩いて? はっ!! 私、宮原さんの家、知らない!
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!