保護

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「ほら、余計なことを言ってないで、ベッド 運ぶぞ。 矢島、手伝え。」 宮原さんは照れを隠すように部屋に上がり、ベッドのマットレスを持ち上げる。 「あ、いえ、私が。」 私が慌てて駆け寄ると、 「由里子さんは見ててくれればいいから。 こういうのは男の仕事。」 と宮原さんは優しく微笑んでくれた。 「はいはい。」 矢島さんと呼ばれた彼は、反対側を持ち上げ、マットレスを部屋の隅に1度立てる。 そのまま今度は2人でベッドを持ち上げ、部屋から搬出していく。 私は、その後ろを何をするでもなくついていった。 何か手伝えることがあるかもしれないし、何より、部屋にひとりでいるのが怖かった。 ベッドをトラックに積み込み、続いて、マットレス、布団を積み込んだ。 ついでにキャリーケースなども乗せて、トラックは走り出し、私と宮原さんは、歩いてマンションに向かった。 時刻はすでに21時を回って、空には半月を少し過ぎてやや丸みを帯びた月が中空に差し掛かっていた。 「由里子さん、暗いから手を。」 そう言って差し出された手に、ためらいながら自分の手を重ねる。 男性と手を繋ぐなんて、小学校以来かもしれない。 それだけでドキドキしながら、繋いだ右手に全神経が集まってるような感覚を覚えながら、宮原さんについていく。 ほんの数百メートルの距離。 それでも、私の中では、1㎞以上歩いたんじゃないかと思うくらい長く感じた。
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