保護

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彼のマンションに着くと、もうその前にトラックが止まっていて、後ろの荷台が開いていた。 布団を運び、マットレスを運び、ベッドを運び… その間に私は、食材の入った袋やキャリーケースを運んだ。 あっという間に搬入が終わって、矢島さんは帰って行った。 慌ただしくて驚く暇もなかったけど、この部屋、最上階!! 窓から見える景色は夜景と夜空の両方が見えてとても美しかった。 「あの、この部屋、お家賃は… 」 住まわせてもらうなら、払うべきものは払わなきゃいけない。 でも、こんな高級な部屋、とても私の給料じゃ、払える気がしない。 「いいよ。気にしないで。 俺も払ってないから。」 は? どういうこと? 私が怪訝な表情を向けると、宮原さんは説明してくれた。 「このマンションは、父の持ち物なんだ。 3年前にここに住んでた人が転居してから、 空き部屋にしておくのがもったいなくて、 俺が住んでる。 だから、気にしないで。」 え、このマンションって、この部屋だけじゃなくて、一棟丸ごと、お父さんの物なの? もしかして、宮原さんて、すごいお金持ちなんじゃ… 「あっ!!」 あることに気づいた私は思わず声を上げてしまった。 「ん? 何?」 宮原さんに尋ねられるが、こんなこと、聞いていいものかどうか… 私が尋ねあぐねていると、 「いいよ。気になることがあるなら、何でも 聞いて。 一緒に住むんだし、隠し事は無しに しよう。」 と微笑んでくれる。 「あの、つかぬ事をお伺いしますが… もしかして、宮原さんて、宮原書店の… ?」 社長令息ですか? とまでは聞けなかった。 「ん、ああ! 父が社長で、祖父が会長だよ。 でも、俺は至って普通の庶民だから、 そういうの、気にしないでもらえると、 嬉しいなぁ。」 いやいや、庶民はこんな所に住まないし。
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