保護

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「とりあえず、食事にしよう! いろいろあって、疲れただろうから、今日は 食べて、寝て、すっきり明日の朝を 迎えよう。」 宮原さんがそういうので、 「じゃあ、もしお嫌じゃなければ、うちから 持ってきたお惣菜を召し上がりませんか?」 と提案した。 「いいの? 由里子さんの手料理が食べられるなんて、 嬉しいなぁ。」 宮原さんは満面の笑みでそう言った。 「あ、いえ、そんなに期待されるほど おいしくはないんですが… 」 私の料理なんて、普通の煮物ばかりだ。 キッチンで、魚だけ焼かせてもらい、私の、100円ショップで揃えた密閉容器から、宮原さん宅にあった高そうな食器にお惣菜を移し、テーブルに並べる。 朝、タイマーをセットし、夕方炊きあがっていたご飯も持ってきていたので、もうそれだけで私のいつもの夕食になる。 そんな庶民の食事でも、宮原さんはおいしいと言って食べてくれた。 食後、食器を洗おうとすると、宮原さんが一緒にキッチンにやってきて、私が洗ったものから順に濯いでくれる。 うちの父は、そんなのしたことない。 今時の男子はこれが普通なの? それとも、宮原さんが特別優しいの? 私は、今まで仕事以外で男性と関わったことがないので、分からない。 でも… 宮原さんと過ごす時間は、穏やかでとても心地よく感じる。 片付けが終わると、宮原さんは先にお風呂を勧めてくれるが、なんとなく男性がいる部屋でお風呂に入ることが落ち着かない。 「あの、本当に、私は後でいいので、宮原さん お先にどうぞ。」 私が何度も言って、ようやく宮原さんが先にお風呂に入ってくれた。 「お先。由里子さんもどうぞ。」 「は、はい。」 湯上りの宮原さんは、なんだか目のやり場に困るほど色っぽくて、普通のTシャツとハーフパンツなのに、目を合わせることもできなかった。 私は逃げるようにお風呂に入る。 久しぶりにゆったりと足を伸ばして湯船に浸かり、1日の疲れを洗い流した。 私がお風呂から上がると、もうとっくに寝ていると思ってた宮原さんが、リビングで本を読んでいた。 「あ、お風呂ありがとうございました。」 お礼を言いながら、やっぱり目のやり場に困る。 この人は、なんで男の人なのに、こんなに色っぽいんだろう。
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