同居と同期

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「本当に? それとも、これも演技?」 ああ、こんなこと、言うつもりじゃなかったのに。 彼の表情は苦しそうに歪んだ。 「演技じゃない。 本気で、本当に、俺には由里子さんしか いない。 だから、信じて。 由里子さん、俺と付き合ってください。 真剣に、結婚を前提として、 付き合ってください。」 本当に? 「結婚を前提とした以上、相応の理由なく 別れると、婚約不履行で訴えることが できるんですよ?」 私は読書で培った知識を武器に宮原さんに迫る。 「構いません。 俺は、本気で由里子さんと結婚したいと 思ってるから。 だから、由里子さん、 俺を選んでください。」 ああ… 信じてもいいんだろうか。 というか、信じたい。 もう、傷ついても、彼のそばにいられるなら、それでいい。 もし傷ついたら、その時、また泣けばいい。 「宮原さん。 こんな私ですが、宮原さんが好きです。 お付き合いしていただけますか?」 「っ! はい。もちろん。 由里子さん、ありがとう!」 宮原さんは、そのまま私を抱きしめた。 いつものように、優しいハグではなく、ぎゅっと力強く、抱きしめてくれた。 私はそっと腕を宮原さんの背中に回す。 宮原さんの胸に頬が当たり、宮原さんの鼓動を頬で感じた。 すごく早い鼓動。 宮原さんもドキドキしてくれてる。 これが嘘であるはずがない。 大丈夫。 信じよう。 優美ではなく、宮原さんを信じる。 私は、宮原さんの背でシャツをキュッと握りしめた。
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