初デートは…

7/16
前へ
/90ページ
次へ
「由里子さんは、昔からそのままだったん ですね。」 そう言われて、私は首を傾げる。 「そうですか?」 「だって、今だって、争いごとは嫌いでしょ? この前だって、同期の子にあんなに失礼な 事を言われたのに、全く言い返さないし。 俺の方がムカついてたよ。 まぁ、あんまり波風立てて、由里子さんが あとで、気まずくなるといけないと思って 我慢してたけど。」 私は驚いて、宮原さんを直視してしまった。 「宮原さんが怒ってくださってたんですか? あの時。」 「当たり前だろ? 好きな人を目の前で侮辱されたんだよ。」 好きな人! そんなことを正面からさらりと言われて、恥ずかしくて顔から火が出そう。 「あの人は、きっと自分に自信があって、 周りの人を無意識に自分より下に見てるん だろうね。 ある意味、可哀想な人だと思うよ。」 そうか。 そうだったんだ。 私はずっと、明るくてハキハキしてる優美が羨ましかったから、私より優美の方が全てにおいて上なんだと思ってたけど、優美も私を下に見てたのか。 「それにしても、由里子さんは、読書を 好きになる前から、言葉を正しく理解する 事が出来たんだね。」 「え?」 私が首を傾げたところで、抹茶ラテとロイヤルミルクティーが運ばれてきた。 「すごい… 本に書いてあった通りです。」 目の前にある抹茶ラテにもロイヤルミルクティーにも、上にたっぷりのホイップクリームが渦巻き状に浮いていて、抹茶も紅茶も全く見えない。 「このロイヤルミルクティーを好んで 飲んでたら、言われなくても甘い物好きだと 分かりますね。」 私はスプーンで、抹茶ラテの上のクリームを掬って口に運ぶ。 「だな。 かわいい外観のお店にこのメニューじゃ、 お客さんが女の子ばかりなのも頷ける。 毎日、男1人で通うのは勇気がいる だろうな。」 宮原さんは自分の事のように苦笑した。 物語では、男性が毎日この店に通って、ロイヤルミルクティーを頼むシーンから始まる。
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1613人が本棚に入れています
本棚に追加