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「由里子さんは、昔からそのままだったん
ですね。」
そう言われて、私は首を傾げる。
「そうですか?」
「だって、今だって、争いごとは嫌いでしょ?
この前だって、同期の子にあんなに失礼な
事を言われたのに、全く言い返さないし。
俺の方がムカついてたよ。
まぁ、あんまり波風立てて、由里子さんが
あとで、気まずくなるといけないと思って
我慢してたけど。」
私は驚いて、宮原さんを直視してしまった。
「宮原さんが怒ってくださってたんですか?
あの時。」
「当たり前だろ?
好きな人を目の前で侮辱されたんだよ。」
好きな人!
そんなことを正面からさらりと言われて、恥ずかしくて顔から火が出そう。
「あの人は、きっと自分に自信があって、
周りの人を無意識に自分より下に見てるん
だろうね。
ある意味、可哀想な人だと思うよ。」
そうか。
そうだったんだ。
私はずっと、明るくてハキハキしてる優美が羨ましかったから、私より優美の方が全てにおいて上なんだと思ってたけど、優美も私を下に見てたのか。
「それにしても、由里子さんは、読書を
好きになる前から、言葉を正しく理解する
事が出来たんだね。」
「え?」
私が首を傾げたところで、抹茶ラテとロイヤルミルクティーが運ばれてきた。
「すごい…
本に書いてあった通りです。」
目の前にある抹茶ラテにもロイヤルミルクティーにも、上にたっぷりのホイップクリームが渦巻き状に浮いていて、抹茶も紅茶も全く見えない。
「このロイヤルミルクティーを好んで
飲んでたら、言われなくても甘い物好きだと
分かりますね。」
私はスプーンで、抹茶ラテの上のクリームを掬って口に運ぶ。
「だな。
かわいい外観のお店にこのメニューじゃ、
お客さんが女の子ばかりなのも頷ける。
毎日、男1人で通うのは勇気がいる
だろうな。」
宮原さんは自分の事のように苦笑した。
物語では、男性が毎日この店に通って、ロイヤルミルクティーを頼むシーンから始まる。
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