初デートは…

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「綺麗だなぁ。これでもかってくらい、 くっきりはっきり見える。」 と宮原さんは苦笑する。 「まぁ、朧月は春の季語ですから、夏には 見られませんよ。」 私が言うと、 「じゃあ、これも来年だな。」 と宮原さんは言って、私の腰を抱いた。 そんなことをされた事がない私は、焦って固まってしまう。 えっと、こういう時は、どうすればいいの? 私が固まったままでいると、宮原さんの手が腰から離れた。 私がほっとしていると、今度は手がうなじに添えられる。 きょとんとする私の前に、月を背にした宮原さんの顔が近づき、そのままそっと私の唇に触れた。 一瞬触れて、離れたかと思うと、再び、しっとりと押し当てられる。 それがキスだと気づいたのは、宮原さんの唇が再び離れてからだった。 「由里子さん、好きです。 ずっと好きでした。」 宮原さんは、右手で私の髪を優しく撫で、左手で私の手を握りながら言う。 「え、はい、あの、私も… 」 私は恥ずかしくて、それだけ言うのが精一杯だった。 私、キスした… 宮原さんと… 心臓が飛び出しそうなくらい、ドキドキしてる。 するともう一度、宮原さんの顔が近づいてきた。 唇が触れた瞬間に私は目を閉じた。 目を閉じると、これまで以上に宮原さんを近くに感じた。
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