出張

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出張

翌水曜日。 私はいつも通り、大和さんに送られて出勤する。 優美とも、あれから特に大和さんの話をする事もなく、以前の仲の良い普通の同期に戻っている。 そんな日を数日過ごした後、カウンターで貸し出し業務をしている合間に、優美に話しかけられた。 「由里子、知ってる? あそこの人、絶対、由里子のこと、 好きだよね。」 え? 驚いた私が顔を上げると、優美の視線の先には、書棚の奥のソファーから、こちらを見る男性の姿があった。 目があった瞬間に、顔を伏せる彼の手には、少し大きめのハードカバー。 奥のソファーは棚の陰になるので、カウンターが見えるのはその一角だけ。 「あの人、いつもあそこに座って、こっちを 見てるよ。 いっつも、由里子を追って視線が動くから、 絶対、由里子狙いだって。」 いつかのあの男性の事が頭をよぎる。 あの人なの? でも、暗がりだったし、顔はよく見ていない。 背はそれほど高くはなかった気がするけど… 職場も自宅も知られているとしたら… そこはかとない恐怖が、私の足を震えさせる。 彼じゃないかもしれないのに。 だけど、その後、気をつけて見ていると、結構な割合で彼は昼間の図書館にやってきて、同じ場所で同じようにこちらを見て座っている。 だけど、何かされたわけじゃない。 話しかけてすら来ない。 その状況で警察に言うのもためらわれた。
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