お正月

10/12

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翌朝、私たちは、4人で初詣に出かけた。 人混みで揉みくちゃにされながらも、大和さんがしっかりと肩を抱いて守ってくれた。 大和さん、だいすき。 私は昨夜、大和さんと離れて眠ってみて、改めて大和さんの温もりの大切さに気づいた気がする。 翌日は、大和さんはお仕事。 私は、大和さんを見送って、両親とのんびり過ごす…予定だった。 だけど、午前中は尋問大会と化した。 「由里子、宮原さんとはいつからお知り合い なの?」 お茶を飲みながら、母が問う。 「最初の事件の少し前かな。 あ、そうそう、私が好きな作家さんの訃報が ニュースになった日だよ。 犯人が言うには、その1週間後に私が 大和さんとお茶してるのを見て、警告する ために待ち伏せたって言ってるらしい から。」 「あら、由里子が知り合ってすぐの人と お茶するなんて珍しい。」 「違うの。 いつも通り仕事帰りに本屋さんに寄ったら、 訃報の掲示物があってつい泣いちゃったの。 だから、大和さんがハンカチを貸して くれて… それを返してたの。」 私はほんの半年前の事ながら、懐かしく思い返した。 「そう。 宮原さん、あなたのためにここの防犯対策を 見直したって言ってたけど、オーナーさんに 掛け合ってくれたの?」 「あ、うん。 っていうか、オーナーさんは宮原さんの お父さんなんだけどね。」 母に説明をする。 「で、犯人は今、どうしてるの? 実刑になったの? それとも執行猶予は付いた?」 「ううん、裁判はまだこれからなの。 10月に事件があって、逮捕されたんだけど、 送検されてから起訴されるまでに結構時間が 掛かって、その後年末年始に差し掛かるから 最初の裁判が来週なの。 多分、2週間後くらいに判決が出るだろう って弁護士さんが言ってた。」 裁判がこんなに時間が掛かるものだなんて、知らなかったよ。 「弁護士さんは、どうしたの?」 「大和さんの会社の顧問弁護士に紹介して いただいて… とっても親身になってくださるいい人 なの。」
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