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そこで、マリーの記憶に残っていた赤い花畑が公園として開放されている事と、今も管理人夫婦が大切に管理をしている事を知ったのだった。
ただ、そのブログが書かれた日付が一昨年だったので、管理人の奥様が亡くなっていたのは知らなかったが。
「もっと早く、思い出していれば。探せば良かったわね」
今更、何を言っても、言い訳にしかならない事はわかっていた。仕事を理由にしても、育児を理由にしても。
けれども、もう一度、あの管理人夫婦に会ってみたかった。
きっと、あの管理人は、奥様が居なくてもこの地とポピーの花畑を守り続けるのだろう。
亡くなった同胞のため、仲間のため、そしてーー奥様のためにも。
「また、来ようか。エレナ」
眠っているエレナに、マリーはそっと声を掛けた。寝言かもしれないが、エレナは返事を返してきたのだった。
「まま……。おはな、きれいだよ……」
「そうね」
マリーは腕に抱えているエレナに、そっと頬をくっつけた。嬉しそうに笑って、またすやすやと眠るエレナに、マリーは笑みを浮かべたのだった。
そうして、マリーは通行の邪魔にならない場所に移動すると、立ち止まってオレンジ色に染まった赤い花畑を振り返った。
オリエンタル・ポピーの花言葉には、「繁栄・優しい愛」がある。マリーはこの赤い花の名前を知った後に、一緒に花言葉も調べたのだった。
ーーこの地は、管理人の優しい愛に溢れている。
腕に抱えているエレナが存在を主張するようにむにゃむにゃと声をあげると、マリーは家路を急いだのだった。
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