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ポピーの花畑と家族〜過去〜
「今から20年前も、同じように花を手折った娘とその家族が居た」
今から20年前までは、この公園はまだ公園として開放しておらず、管理人夫婦と関係者のみしか入れなかった。また、今のように整ってはおらず、自分達だけが楽しめるようにボロボロの柵で囲んで栽培していたのだった。
この地は、かつて管理人夫婦がまだ若かった頃に起こった戦争の時に、故郷に帰る事なく異郷の地で不遇なまま死んでいった同胞達と、その後に内乱で死に、又は処刑をされた仲間達の鎮魂の為に、花を育て始めたのがきっかけとなったのであった。
その為、この地は鎮魂を目的として、無闇に人を立ち入らせたり、ましては花を手折ったりさせないように、管理人が厳しく管理をしていたのだった。
ある日、管理人の仕事関係の家族をこの地に招き入れた。その家族には、6歳くらいの金髪の女の子が居た。
そして、その女の子も、両親や管理人夫婦が目を離した隙に、満開に咲いたばかりのポピーを手折ってしまったのだった。
当然、管理人は烈火の如く怒り、娘の両親も謝り続けた。どこかで落ちつかねば、そうしなければ、話が終わらないと思いながらも、管理人自身も怒りすぎて、自分が引くに引けなくなってしまった。
そんな時、それまで謝り続ける両親を不安な顔で見ていた娘が、手折った花をそっと管理人に差し出してきたのだった。
管理人が困っていると、その娘は満面の笑みでこう言ったのだった。
「おはなをみると、えがおになるんだって! ママがいっていたの。だから、このおはな、おじいさんにあげる!」
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