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ポピーの花畑と親子〜再び、現在〜
「それからしばらくして、国に申請をして補助金をもらって、公園としての整備が整った後に、この地を解放した。多くの人に花を見て、笑顔になって欲しかった。それに、少しでも、我らが同胞や仲間達を覚えていて欲しくてな」
そこで、管理人は言葉を切ると、悲しげに顔を歪めたのだった。
「あれから色んな人が来て、中にはやはり間違えて手折ってしまった者もいたが……手折った花を渡そうとしてきたのは、今日のお嬢ちゃんとあの時の娘だけだった」
管理人は視線をマリーからエレナに移したのだった。管理人の話を聞いていたマリーの傍らには、いつの間にか眠ってしまったエレナが寄りかかっていたのだった。
「しかし、その家族と娘はあれからやって来なかった」
マリーはそっと顔を伏せた。マリーに寄りかかって、すやすやと眠っているエレナの身体がくっついている辺りだけが、暖かった。
「聞いたところによると、家族は『事件』に巻き込まれて亡くなったと。残念だ。この花畑をもう一度見て欲しかったのだがな。昨年亡くなった妻もまた会いたがっていたんだがなあ」
「……それは、残念でしたね」
マリーはそっと顔を伏せたのだった。そんなマリーが話を聞いて悲しんでいると思った管理人は、話題を変えたのだった。
「ところで、おふたりはこの地を何で知ったのかな? この地は先程の通り、鎮魂を目的としているから、あまり大々的に宣伝はしていないんだよ。今年は異様に人が来ているようだが」
「……ネットで拝見しました。とある方のブログでこの花畑と公園を見つけて」
そうかそうか、ネットはすごいね。と、管理人は嬉しそうに笑っていた。
しかし、マリーは辛そうに、眠るエレナの肩をぎゅっと握ったのだった。
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