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陸。(後編)
「お前が、全てに頓着して完璧人間になったら、俺は捨てられちまうんじゃないのか?」
服装だってそうだ。お前は服装に無頓着だが――それを改善しちまうと、お前がもっと目立つだろ? すると俺が気が気じゃなくなっちまう。
カップ麺の汁で服を汚す件か? 俺はお前の世話をするのが楽しいんだ。だから、そのままでいい。俺の楽しみを奪ってくれるなよ。
無自覚なようだから俺は敢えて言わないが、要はかなり魅力的なイケメンだ。無造作ヘアーや野暮ったい服装、薄ぼんやりした物腰がそれを上手くカモフラージュしてくれているから良いものの。
新卒ルーキーですら『副社長、超イケメンですよね! 社長もそうですけどこの会社容姿のレベル高すぎますよ』なんて言ってたんだぜ。ルーキーも爽やかなイケメンだからな。敵が多すぎて困る。
傷つける様な事を言っちまったな、悪かった。
あれは、俺の前だけでは改善した方がいい要素もあるが、大部分はそのままで良い――それこそ、苦肉の策で捻り出した。まあ、あれだ。木に竹を継いだようなもんだ。
それにしても……要が小説を書いているとは、全く気付かなかった。
今回の出来事は、どんな物語になるんだろう? 少し気になるが、俺がそれを覗くことは無い。お前が「読んでくれ」と言うまではな。頑張れ、応援してるぞ!
もうひとつ――そのコンテストのテーマに、俺は心から感謝している。
何故かって? それは、今回の出来事で俺達は互いの思いをより深く知ることができ、更に言語化して伝え合うことができたからだ。
うん。偶には、こんなことも悪くない。
明日と明後日は休みだ。
今夜はゆっくりと、な? 要。
愛してる。
―了―
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