49人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
伍。
明らかに要の様子がオカシイ。
例の発表が理由だということは容易にわかるが、あれは要からの提案だった筈だし、自分からもここまであからさまに避けられるようなことを言った覚えは無い。
昨日は日曜日だったが、俺は新卒ルーキーの起した企画書のチェックと契約書の再確認等、自室に籠って仕事をしたり、要に頼まれていた日用品の買い物などをしているうちにあっという間に過ぎてしまった。
要も、趣味の料理を作り貯めしたり、自分の好きなことをやっていたようだが――思えば、普段の日曜に比べて会話は少なかったような気がする。
そして今日は月曜日。通常なら「社長―! 一緒に飯食おうぜッ」と要が誘ってくるのだが……。さっさと、食事に出かけてしまったようだ。仕方なく俺は、直前まで打ちあわせをしていた新卒ルーキーと飯を食いに出た。
一昨夜、土曜の晩。要からの、擽ったくなるような嫌い発表の後、俺からも改善した方が良さそうな点について発表した。
すると――
「そうか。うん。そうだよな、お前が言うとおりだよ。そうだな、僕も気をつけなくちゃだよな! ――」
俺の話を黙って聞いていた要は、途端に明るい調子でそう言い放つと、休前日にも関わらずとっとと寝室に向かい一人でベッドに潜り込んでしまった。
平日は互いの身体への負担を鑑み諸々の行為を抑えている。だからこそ休前日は――
しかしあの時も俺は、『気分が乗らない日もあるんだろう』と思い、気にも留めずに自室で休んだ。
一体全体、どうなってるんだ……
こんな状態を、いつまでも看過することはできない。
近いうちに、きちんと膝を詰めて要と話し合おう!
航はすっかりと気持ちを切り替え、山積みの書類に目を通し始めた。すると、スタッフの通用口から「ただいま帰りました~」という、要の控えめな挨拶が聞こえてきた。
――おかえり。俺は心の中で小さく要に声を掛ける。
最初のコメントを投稿しよう!