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3日間の期間
翌日、マカは普通に登校した。
「マカ! 大丈夫ぅ?」
ミナやクラスメート達が、心配そうな表情で登校してきたマカを向かえる。
「うん、もう大丈夫。一日ゆっくり休んだら、元気になったから」
マカは満面の笑顔を見せる。
「それは良かった」
サクヤの言葉に、マカはふと真顔に戻る。
サクヤはいた。昨日と同じ席に。
「マカがいないと、ミナが落ち込むからね」
「そっそんなに落ち込んでいたぁ?」
「うん。かなーり。手が付けられないぐらい?」
「やだぁ」
「ふふっ。心配してくれて、ありがとう。もう大丈夫だからね」
ミナを安心させるように微笑んだマカは、自分の席に向かった。
そして笑みを浮かべたまま、サクヤに言葉をかける。
「サクヤにも心配かけちゃったかしら? もう平気だから」
その言葉の意味を瞬時に悟り、サクヤは口元に笑みを浮かべた。
「それは良かった。俺もマカが元気な方が、嬉しいから」
「それはどうも」
お互い、意味深な笑みを浮かべる。
その様子を、廊下でリリスは見ていた。
「…なるほど。確かにただ者ではなさそうですね」
気配を消していたリリスだが、サクヤに気付かれていることは分かっていた。
なのでそのまま自分の教室へ向かう。
「マカ先輩が目的ならば、少々懲らしめる必要がありますね」
そう呟くリリスの口は、歪んだ笑みを形作っていた。
「うっ! 何か悪寒が…」
「まっマカ、大丈夫ぅ?」
―が、何故かマカの背筋に悪寒が走り抜けた。
―その後、特にサクヤは動かなかった。
なのでマカは普通に過ごす。
監視の視線が気になるものの、ソウマの言うように一人にはならなかった。
そのまま放課後になり、マカはミナとは一緒に帰らず、近くの駐車場に向かった。
「すまんな、カエデ。車の運転を頼んで」
「とんでもございません。不審者がマカ様に近付いているというのに、動かないわけにはいきませんからね」
いつもはメイド服のカエデだが、今はスーツ姿だった。
車は普通の乗用車。
マカは後部座席に乗り込む。
「マーちゃん、お疲れさまぁ」
「お疲れ様、マカさん」
私服姿のモモとレイラも同じ車に乗っていた。
モモはマカと同じく後部座席に、レイラはカエデの隣の助手席に乗っていた。
「しかしメイド以外の姿を見ると、新鮮というか違和感があるな」
「えへへ。このワンピース、可愛い?」
「一応、ちゃんとした私服を着てきたのよ。マカさんのお付きの者として」
「服はともかく、お付きの者とは何だ? レイラ。普通の女子高校生にはない者だろう?」
「あっ、マカさんは普通の女子高校生という設定にしているんだっけ」
「ああ、忘れるな。特にお前は私と一つしか変わらないんだから、言葉遣いはともかく、扱いは外では変えろ」
「はーい」
「お前もだぞ、カエデ。年下の女子高校生に敬語と敬う姿勢は控えろよ」
「わたくしの場合、親の秘書とでも言えば通じますわよ」
確かに通じるなと、マカは思った。
本当はマカ専属の戦闘メイド達だが、こうやって偽りの役職でも通用するぐらいの演技力は身に付けているだろう。
「とにかくお一人での行動はお止めくださいね。いくらマカ様でも相性の悪いモノとの戦いは控えてください」
「へいへい。確かに私はワケの分からないヤツらとの戦いの相性は悪いしな」
いくら無限の力を生み出す魂を持つとは言え、マカはほとんどその力を使いこなせてはいない。
上手く扱えないことが歯痒く、敵と戦うよりも自分自身に苦戦していた。
「でもマカさんがまさか魔女の力を借りるとは思わなかったなぁ」
心底心外というように、レイラが呟く。
「成り行きに、な。だが短期間だけだ。明日が終わり、明後日になれば契約は終了だ」
「そしたらまた、マカさんを狙ってくるかもよ?」
「その時は迎え撃つまで。魔女なんて私の手に余る」
その苦渋の表情は、血族達にかけられた面倒ごとを振り返っている表れだ。
「同属達でさえ忌々しいのに…」
「なら血族の里へお帰りくださいませ。安全なことを言えば、あそこが一番ですわ」
「頭を下げても断る。あそこがイヤで、危険を承知で出て来んだからな」
「ホントに…。マカ様の同属嫌いにも困ったものですわね」
「やかましい、カエデ。あっ、夕飯は商店街で仕入れよう。たまにはあそこの惣菜を食いたい」
「…味覚が変わりましたね、マカ様」
カエデは顔をしかめながら、頭痛に耐えた。
「良いもんばっか食っているとな、逆に味覚が無くなるように感じるんだ。ジャンクフードも悪くないぞ?」
「あっ、アタシも好きぃ。今度一緒に食べに行こうよぉ、マーちゃん」
「いけませんっ、モモ!」
「カエデの眼を盗んで、行こうな」
「あっ、わたしも一緒に行く」
「レイラ!」
そんなこんなで、車内は賑やかだった。
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