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「カガミ、お前の情報屋としての仕事を持ちかけに来た」 「情報屋としての? 一体何があったんです?」 マカの申し出に、カガミは眼を丸くした。 「実は…」 マカはサクヤのことを説明した。 そして記憶の改ざんが何かの道具で行われているのではないかと、話をする。 「…記憶の改ざん、ですか。残念ながら思い当たることはありませんね。しかしどちらかと言えば、あなた達、血族ならありうる話なのでは?」 「ウチの血族でも、あそこまで大量の記憶改ざんはできん。…しかしそれなら、そういうことを得意としているモノ達の心当たりは?」 カガミはしばらく考え込んだ後、首を横に振った。 「記憶を操作する能力自体、珍しいですからね。残念ながら能力者の話は聞いていませんね」 「ここはダメか…。ならソウマの所に行ってみるか?」 「情報屋ならば、知り合いがやっています。もし良ければ、そちらをご紹介しましょうか?」 「どういう情報屋だ?」 「表ではわたしやソウマさんと同じように、店を営んでいます。まあ扱う商品は取り扱い注意物ですが…」 「同業者かっ!?」 「まあどうしても隠れ蓑としては、そういう店になってしまうんですよ。ですが情報屋としては、ウチよりも上だと思いますよ? わたしは近年この土地に来ましたが、彼は長年いますし」 「……そうだったな。カガミ、お前も元は異国のモノだったな」 マカは痛むこめかみを指で押した。 カガミは見た目でも異国のモノだと分かる容姿をしていた。 しかしリリスと同じで日本語が上手い上に、日本に馴染んでいる為、うっかり忘れそうになるのだ。 「まあ何はともあれ、訪ねて損はないだろう。場所を教えてくれ」 「かしこまりました。少々お待ちください」 カガミは店の奥へ、姿を消した。 その間、マカはキョロキョロと店内を見回す。 「…以前来た時と、全く商品が違うな。全部売れたのか?」 「あ~そうみたいです。強烈なファンがいますので」 ミコトが苦笑しながら、同じように店内を見る。 その姿を見ながらマカは声を潜め、尋ねた。 「…ミコトと言ったな。お前、自分のことを普通の人間ではないと言うが……」 「ええ、まあ。ウチの先祖が呪術師でしてねぇ。それが人の生死に関わる術を使っていたんですよ」 ミコトは苦笑しながら、近くにあったアンティークドールをポンポンと叩いた。 「その呪術師は、金と権力を持つ人間に頼まれて、そこの娘と結婚したんです。それでその家の血筋の者に、災いが起こらないよう血に術を取り入れた」 そこまで語り、ミコトは肩を竦める。 「おかげでウチの血縁者達は滅多なことでは不幸にならない。けれどその反面、人の死に多く関わりやすくなったんです」 「…人の命運と引き換えに、血縁者達は平穏を手に入れているというワケか」 マカは苦渋の表情で言った。 「ご名答。血縁者達もそれを知りつつも、呪いを解く方法を知らないんです。すでに呪術師なんて誰もやっていないですからねぇ」 「誰もコントロールすらできないのか?」 「できたら良いんですけどね。おかげでアタシみたいなモノが出てくる始末ですよ」 ミコトは元をただせば普通の人間。 しかし呪術師の術、呪いとも祝福とも言えるモノのせいで、人の道からはズレてしまったのだろう。 それはミコトだけではなく、他の血縁者も同じこと。 「お前と同じ血縁者達は、お前と同じように闇の世界で生きているのか?」 「いえいえ。アタシはマレな方です。アタシに闇業職人としての技術を教えてくれた師匠と、中学生時代に出会いましてね。そっからこっちに。他の血縁者達はなるべく普通に生きていますよ」 「お前の家族は今の職業のことは?」 「もちろん、知ってはいますがね。特に口出しなんてしませんよ」 ミコトはニヤッと笑う。 …確かに血族として呪いと祝福を受けているのならば、同族が闇の世界に入っても、何も言えないだろう。 「しかし死体を使ったアンティーク品、とはな…。同じ闇でも、もっとまともなのもあっただろうに」
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