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「…と言いつつ、何をメモしているっ!?」
リリスはどこからか手帳を取り出し、書き込んでいた。
「何でもありませんって。ですが困りましたね。八方塞がりじゃありませんか」
「…いや。とりあえず先程の体質のことを、ソウマに聞いてみる。道具の可能性も含めてな」
「新作っていつ、どこで出ても不思議じゃありませんものね」
「…厄介だな」
マカはため息をつきながら、芋ようかんを頬張った。
「んっ、んまいな。この茶も美味い」
「ありがとうございます。マナが和菓子と緑茶が好きでしてね。良いものを買っておくよう、言われているんですよ」
マカとリリスはじっとミツルを見た。
「店主、随分とマナに甘いんだな」
「もしかして甘い仲ですか?」
リリスの言葉を聞いて、マナはキッと睨みつけてきた。
「私はコイツの監視役だっ! 妙な物を客に売り付けないよう、見張っているんだ!」
「…と言うことで、俺の片想いです」
「ミツルっ!」
「あはは。まあそれは置いておきまして。引き続き調査をした方が良いですか?」
「ん~、いや。今回はここまでで良い。後はウチの情報屋に任せてみる。ところで報酬だが、金と貸し借り、どちらが良い?」
「ウチはどちらも扱っていますが…初対面ですからね。これからもご贔屓にしていただきたいので、貸し借りの方で」
「なら、コレで良いか?」
マカは再び名刺を取り出し、テーブルの上に置いた。
「私が裏のモノと連絡を取っている時に使っている、連絡先だ。カガミにも同じモノを渡してある」
「そうですか。では今回はこれで構いません」
ミツルは面白い物を手に入れたという表情で、名刺を手に取った。
「これからもご縁ができると嬉しいです」
「まっ、どうなるかは運次第だろう。リリス、そろそろ行くぞ」
「ですね」
二人は綺麗に芋ようかんと緑茶を片付け、立ち上がった。
ミツルとマナは店の外まで見送りに来た。
「ところでそのサクヤという人物、あなたに何かしてきましたか?」
「今のところは特に。私が逃げ出したというのもあるがな」
サクヤのことを思い出し、マカは苦々しい気持ちにさせられる。
「いくら私でも、見知らぬモノを知人として扱うことは難しいし、突然過ぎた」
「そうですね…。まああなたが目的ならば、そう遠くないうちに何かやるでしょう。くれぐれもご注意を」
「ああ、分かっている」
ミツルの言ったような体質ならば、余計に警戒した方が良いだろう。
下手をすればクラスメート全員を人質に、何か要求されるかもしれないからだ。
「もしもの時は、ぜひご連絡ください。お力になりますよ? ―報酬次第では」
「最後がなければ良かったんだがな。まっ、最後の手段としては考えといてやる」
「ありがとうございます。ではお気を付けて」
ミツルは笑顔で手を振り、マナは黙って頭を下げた。
帰り道、マカは険しい表情で腕を組む。
「血による体質能力、か…。確かに同属と考えた方が良さそうだ」
「血族、全てを知っているのは現当主だけですか?」
「どうだろうなぁ…。数は少ないが種類は豊富だからな、ウチの血族」
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