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僕はふとした時分に、友達のFにそのことを話してみた。Fはまだしっかりしない顎髭を触りながら、あまり興味ない様子で反応した。
「ホームレスか何かでしょ、きっと。」
そしてそのまま話を自分のことの方へと続けた。
「昔、公園にいたホームレスのお爺ちゃんに、みんなでちょっかいかけたらさ、棒を持ってこっちへ走ってきてさ、すっごい怖かった。」
僕はまたふとした時分、今度は学校の帰り道にMにそのことを話した。
「赤く光る人? 何それ。ホームレスか呆けたジジイじゃない。――というか、それってどこの橋?」
今度は興味あるようで、くねくね自転車を動かしながら、面白そうに横に並んできた。
歩道橋の向こうの方で、夕日を祭るように旋回する鴉の群れが見えた。その場所は確かにあの橋の辺りだった。
「今日は会えるかもしれない。」
僕がそう言うと、Mは早速今晩の予定を立て始めた。
その夜、僕の家でゲームをしたりして時間を潰した後、ふたりでその橋に向かった。家を出る前、鞄の中にある英単語帳を思い出して、うな垂れる明日の自分を見たが、後で何とかなるだろうと思い、Mと玄関を飛び出した。
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