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義弥は窺うように裕一の瞳の色を見るが、彼はけして目を逸らさなかった。確かに、裕一の言は正しかった。付き合う前の彼の乱行を知っていたから、つい疑ってしまったが、挙動にも怪しい点はない。と、裕一が派手にくしゃみをした。
「あ……ごめん」
扉を閉めるのも忘れるほど怒っていた義弥だが、いつもの凛とした優しい声色に戻ると、慌てて閉めに行った。すぐに帰ってくると、裕一が風邪をひかないよう、布団を首元まで上げてやる。
「ん、サンキュ」
素直に礼を言い、そのままおはようのキスをしようと裕一は掌を義弥の首筋にかけたが、その二人の間で、一際高く赤ん坊が泣きじゃくった。
「あ……」
「どう……するか義弥……」
「……これ、おなかが空いてる時の泣き方だ」
「何で分かる?」
キョトンとした裕一に、困り顔で義弥が答えた。
「姉が二人いるんだ。甥っ子も二人」
半ば開き直ったように、ガシガシと寝癖の付いた天然パーマをかき乱した後、裕一は言った。
「じゃあアレだ。今日のデートは、ベビーショップだな」
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