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次の日の朝、いつもの時間に玄関チャイムが鳴って外に出ると瀬良君が迎えにきていた。
宇都宮君ではなく瀬良君である。
目を擦ってみたけどやっぱり瀬良君が立っていた。
「あれ?おまえなんでいるんだ?」
宇都宮君もやってきて私と同じように驚いた。
瀬良君は呆然としている私の肩を引き寄せ、宇都宮君に向かってニッコリ微笑みながら言った。
「僕達、付き合うことにしたんだ。」
──────はい?
誰が誰と?
瀬良君と私が?有り得ない。
じゃあ瀬良君と宇都宮君?もっと有り得ない。
「そうなのか?びっくり〜。」
って。なんで宇都宮君あっさり受け入れちゃってんのっ?
全然驚いてないじゃんっ!もっと驚いてよ!!
瀬良君は私がパニクっているのを無視して肩に乗せた手をそのままに、停車していた車へと私をエスコートした。
もしかしてこの車で一緒に学校まで行くつもりなのだろうか。
「あのっ……」
「彼女のふりして。」
瀬良君が私にだけ聞こえるようにささやいた。
昨日瀬良君が別れ際に協力してねと言っていたのはもしかしてこのことなのだろうか?
こんなので宇都宮君がサヴァンかどうかなんてわかるの?
全然結びつかないっ。
瀬良君が先に乗り、私が続いて乗ると、宇都宮君まで乗ってきた。
てっ……なんで?
「電車苦手だったんだよ〜。助かる〜。」
きっと宇都宮君の頭の中では梨花の友達は俺も友達。
梨花を車で送るんなら俺も当然乗って良し!なんだろう。
宇都宮君は着いたら起こしてっと言って私の肩に頭をのせてスヤスヤと寝てしまった。
「なんで彼も乗るの?予想外なんだけど。」
瀬良君が呆れたようにつぶやいた。
「…それが宇都宮君なんで。」
「こんな予定ではなかったんだけどな……」
「……すいません。」
なぜ私が謝らなきゃいけないんだろう……
昼休みになり、いつものように宇都宮君が教室までやってきた。
「梨花──っ!彼氏も連れて来たぞーっ!」
ぶはっ……!!
私は飲んでたお茶を吹き出してしまった。
「う、宇都宮君っと…瀬良君……?」
瀬良君は無理矢理に引っ張られてきたようで、私と目が合うと困ったような笑顔を見せた。
瀬良君の登場に、クラスの女子達が色めき立つ。
「梨花ちゃん。今彼氏って……」
「ま、まさかーっ。宇都宮君の冗談、冗談っ!」
宇都宮君は私の横に瀬良君を座らせると、自分はトランプをしているグループに呼ばれて行ってしまった。
「ねぇ、彼の言動が斜め上すぎて戸惑うんだけど…彼の思考回路はどうなってるの?」
それは私が一番知りたいです。
「参ったな。彼は君のことを好きなんだと思ったんだけど……」
もしかして宇都宮君にヤキモチを焼かそうとしたのだろうか?そんなことを宇都宮君に期待しても無駄なのに……
「……私のことは単なるメトロノームにしか思ってないと思います。」
それ以上でもそれ以下でもない。
宇都宮君は私と初めて会ったあの日からずっと、なんにも変わっていないのだ。
「メトロノームねえ……」
瀬良君はため息混じりにそうつぶやくと、楽しそうにトランプで遊ぶ宇都宮君を見つめた。
「瀬良ーっ。おまえもトランプする?こいつらが一緒にしたいんだって。」
女の子達がきゃあきゃあ言いながらこっちを見ている。
宇都宮君が庶民的なアイドルだとすれば、瀬良君は近付くことさえ出来ないトップスターだろう。
音楽科一年、男子二人組は学校内でとても人気が高い。
「そうだね。僕も混ぜてもらおうかな。」
瀬良君に隣に座られた女の子はゆでダコ状態である。
瀬良君はその場にいた女の子達をぐるりと見渡すと、とんでもないことを言い出した。
「宇都宮君。君もこの中から彼女を選んでみたら?みんな素敵な子達ばかりだし。」
なっ……!!
「じゃあコイツにするかな。お菓子たくさんくれるし。」
ななな……っ?!
なにを簡単に決めちゃってんだっ。
言われた子もポカンと口を開けてしまっている。
「ダメだよ宇都宮君!!【いかのおすし】忘れたのっ?お菓子もらっても懐いちゃダメなんだよ?!」
自分でもなにを口走ってるんだかわからない。
でも宇都宮君はどこに納得したのかじゃあ止めると言った。
※いかのおすし
いか…「 知らない人についてイカない」
の……「他人の車にノらない」
お……「オおごえを出す」
す……「スぐ逃げる」
し……「何かあったらすぐシらせる」
良い子は覚えようねっ♡
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