晴れ女

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 天気予報ばかりでなく、通常のニュースでも水不足が叫ばれるくらい晴天の日が続いている。  ダムの貯水率が深刻な数字になり、生活用水の規制も時間の問題だ。  そんな毎日の中、ふと、高校の同級生を思い出した。  彼女は自他とも認める晴れ女で、運動会や遠足など、どんなに天気予報が高い降水確率を示しても、彼女が参加するとイベントは総て晴れた。  そこまで親しい訳ではなかったから、卒業後の進路などは知らないけれど、こうまで晴れの日が続くと、あの子が何か、雨が降ってほしくないことをしているのでは、などと馬鹿げたことを考えてしまう。  そのくらい、もう長く雨が降らない。そしてついに、ダムが干上がって、そこが見えたというニュースが流れた。同時に、ダムから女性の遺体が発見されたというニュースも。  数日と経たずに遺体の身元は確認され、女性を殺してダムに遺体を沈めた犯人も特定された。  その、ニュースで流れた犯人の名前には覚えがないけれど、判明した遺体の名前はとても聞き覚えのあるものだった。  高校の同級生のあの子だ。  まさか殺されてダムに沈められていたなんて。  このニュースが報じられた翌日から、天候は一転し、何ヶ月ぶりかの長雨が毎日降り続いている。  酷い豪雨の日はなく、ただ一日、しとしとと降り続けるだけの雨。  そのおかげで、枯渇していたダムには水が戻り、今はほぼ満帆に近い貯水量らしい。  それにしても、やっぱりあの子は凄まじい晴れ女だったんだな。  遺体を見つけてもらうために、ダムを干上がらせるなんて、普通はできないものね。  死後も発揮されたその力で遺体も犯人も見つかった。どうか成仏できますように。 晴れ女…完
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