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3人でこの花火大会にくるのは何度目だろう。年齢と同じ数だけといっても過言ではないはずだ。 俺たちは小さい頃からずっと、毎年この日は必ず、ここから空を見上げている。別に約束をしているわけでないのだが、どうしてだか、必ず。 幼馴染みといえば聞こえはいいが、結局はただの腐れ縁。というか、腐れていても切りたくなくて、縋り付いている繋がり。 18歳にもなれば、他に仲のいい友だちだっている。 それに付き合って半年になろうかという彼女だっているが、そっちの誘いを断ってまで、俺はこの2人との時間を選んだ。 腹の底に重たく響くような音が鳴り、濃紺の空で弾ける花火。 それを何処かぼんやりと見つめる絵麻の横顔を、俺は盗み見る。 昔から大して変わらない絵麻。あの頃と変わったのは、化粧を覚えた睫毛が、くるりと夜空を向いていることくらい。 取り立てて美人でもない。顔だけで言えば、俺の今の彼女の方が可愛いと思う。 だけどそう思うだけで、恋愛用にとってある心の半分以上は昔からずっと、絵麻のものだった。他の誰と付き合おうと、ずっと、昔から。
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