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E
顔の左側に、焦げ付くような熱を感じる。
それに応えることは出来ないけれど、昔から向けられてきた晴翔からの視線が変わらずそこにあることに少しだけ安心してしまうわたしは、最低なのかもしれない。
気付かないフリをして、夜空に咲き誇る光の花を見つめる。
身体中に響く雷鳴みたいな音がしたかと思えば、大輪の花が咲いて。
毎年同じようなものなのに、それでもまだ綺麗だと思えるわたしの中には、純粋さみたいなものが少しは残っているのだろうか。
不意に、意識が右側に移る。
冬真(トウマ)には、もう何度も一緒に見てきたこの景色はどんな風に映っているのだろう。
去年と同じに見えているだろうか。わたしたちの関係は、去年とはまるで変わっているのに。
3ヶ月前、わたしたちは付き合い始めた。彼氏と彼女、という関係になったのだ。
キスをすることも、体を重ねることも許される関係。体も心も一番近くにある関係になったはずなのに、わたしはまだ、何か物足りなさを感じている。
冬真の体の匂いを知った。唇の感触も、指先がどんなに優しく動くのかも、耳を侵す切ない声も知った。だけど唯一、昔からどうしても知れないことがあった。
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