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零れんばかりの光に照らされた横顔の向こうで、晴翔はいつもそうしているように、絵麻を見つめている。 本人が意志を持ってやっているのかは不明だが、いつだって目で追っているのがバレバレだ。 そして多分絵麻は、ずっと昔からそれに気付いている。気付いていて、知らないふりをしていて。でもちゃんと晴翔の視線を受け止めている。応える気なんて、きっとないに違いないのに。 僕だってずっと、絵麻のことが好きで。それこそ、物心ついたときにはもう、恋というものがどういう感情なのか身をもって思い知らされていた。 胸の奥でただ燻っているだけだった恋心は、十数年の時を経て、ようやく繋がることが出来た。 僕と絵麻は、正式に恋人同士になったのだ。 けれど晴翔にはそのことは伝えていない。絵麻が言ったかは分からないけれど、僕の口からは、どうしても告げることが出来ずにいた。
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