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僕たちが生まれ育ったのは海に程近い街で、毎年夏になると大規模な花火大会が開かれる。
割と人気のある行事で、近隣はもちろん、遠方からもわざわざ駆けつける人たちがいるほどで、このときばかりは普段からは信じられないくらいの混雑を見せるのだった。
それに慣れ親しんでいる僕たちは、わざわざメインの会場に足を運ぶことはしない。
地元民は皆、会場の真裏に当たる、海に向かって流れる河口付近の堤防を陣取り、空を見上げる。
夜が降らせた濃紺の薄闇の中、出会って18年になる2人と並んで腰を下ろし、僕はそこにいる人々と同じように空を見上げていた。
僕の右隣には絵麻(エマ)、そしてその隣には晴翔(ハルト)。
同じ年に生まれ、家が近いというだけで、次の3月で高校を卒業するという今になっても、こうして並んで空を見上げている。
晴翔なんて、ちゃんと彼女がいるにも関わらず、わざわざ僕たちとの時間を選んで。
ちらり、視線を流せば、絵麻は空を彩る光の花を何処かぼんやりと目に映していて、その横顔はなんだか別のことを考えているようにも思える。
けれど僕には絵麻の思考を盗み見る力などなく、ただその横顔を綺麗だなと思うことしか出来なかった。
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