どうってことない雨になれ

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 翌朝も、昨日よりはマシな程度の曇天だった。引きずってない……とは全く言えない、微妙な傷心を抱えて、いつもの様に駅まで歩く。 「……あれ?」  思わず声が出た。  昨日私が傘を捨てた場所の、すぐ近くの家の軒下に、あのピンクの傘が、逆さづりにされてぶら下がっているのだ。まるで干されてでもいるかの様に。 ―――なんで?  柵越しに近づいてみると、ピンクの生地に黒のマーカーで、昨日の日付と、「ほうらんちゅう」と、下手な平仮名が書かれている。  ほうらんちゅうってなんだ。  眉をひそめていると、いきなり玄関ドアが開いて、ランドセルを背負った男の子が飛び出して来た。  男の子は目を輝かせて軒にぶら下がっている傘を見上げる。そしてそのまま視線は、門の前に突っ立っている私に降りて来た。笑顔が、急にきょとん顔に変る。  不審者だと思われただろうか。私は咄嗟に吊るされた傘を指さして笑顔を作った。 「傘、ぶら下がってるね」  間抜けな質問になったが、男の子はなぜか、にっこり笑った。 「いいでしょ。もうすぐかえるよ」  今度は男の子が上の方を指さす。見上げると、傘の枝を吊るした辺りに、泥で出来た鳥の巣があった。すぐにピンとくる。
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