どうってことない雨になれ

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「ツバメの巣なんだね」 「うん、お父さんがこれなら、壊さないであげるって言ってくれたから」  子供の説明は驚くほど要領を得ない。けれど喋り方は可愛らしかったので辛抱強く聞いてみた。  どうやら、ツバメが巣をつくると、玄関が糞だらけになるので、毎年父親が巣をこわしていたんだそうだ。けれど今年は気づいた時には、もう卵を産んでいた。  この男の子は、糞を落とさないように工夫するから、と懇願し、昨日粗大ごみの中から拾って来た傘で、糞ガードを作ったのだ……と、そんな内容だった。ああ、それで、抱卵中なんだ。  そして私のあの物悲しい傘は、糞避けとして生まれ変わったのだ。  泥で作った巣の中からは、ピンと伸びた親鳥のしっぽが覗いている。  じわじわと、私の中のモヤモヤが、小さくなって行くのが分かった。 「その傘、役に立ったんだね」  私が言うと、何も知らないその心優しい男の子は、「うん」と大きく頷いた。
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