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おわりとはじまり。
「じん!いつまで寝てんねん!!」
おかんのおおきな声でぼくは目覚めた。ぼくは見慣れた部屋のベットの上に横たわっていた。
あれ? さくらんちゃんは?
ぼくは飛び起きた。なぜかぼくは部屋で寝ていた。床に綺麗に置かれたリュックがある。中を見てみると、なくなったはずのラムネと赤鬼のじんにあげたはずのせんべい、そして教科書が入っていた。財布には560円入っていた。
まさか、夢だったのか??
ぼくは、家を飛び出た。おかんが何かを叫んだ気がしたけど無視した。山行きのバス停を目指した。しかし、あるはずの場所にバス停がない。
嘘だ。そんなはずは。
そして驚くことに、どこを見回しても、見覚えのある山はなかった。
赤鬼のじん!じん!じん・・・
ぼくはふと、赤鬼のじんの悲しい顔とおおつぶのなみだを思い出した。そういうことだったのか・・・
ぼくは泣いた。おお声で泣いた。赤鬼のじんに届くように。おおきく、長く泣いた。
ぼくはしょんぼりしたまま家に帰った。家に着くと、おかんが怒った。ぼくはおかんの怒鳴り声を完全に無視した。
部屋に戻り、ぼくはベットに腰を下ろした。するとあることに気がついた。
リュックの裏に、まだ新しくみずみずしい、きれいなピンクのはなびらがついていた。手に取ると、すごく温かかった。そして胸がドキドキした。
「ぎゃあ!!なんやこれ。」
下の階からおかんの叫び声が聞こえてきた。ぼくは急いで降りた。
ぼくはおかんの手に持つものを見て、また涙を流した。
「なんやこの赤い糸。気色悪いわぁ。」
赤鬼のじんだ!じんが返しにきたんだ。ぼくは泣きながら喜んだ。ぼくはその赤い縮れ毛をおかんから奪い、おかんに言った。
「おかん。家族はぼくが守るからな。」
おかんは目を丸くしてぽかんとしていた。きっとぼくのかっこよさに感銘を受けているに違いない。ぼくはそれ以上何も言わずに部屋に戻った。ガラガラの笑い声がどこからか聞こえた気がした。
ぼくは準備を終えて、学校に向かった。おかんはなぜか、家を出るまでぼくのことを心配した。大丈夫だ。ぼくは強くなった。
学校に着くと、真っ先にさくらんちゃんが目に入った。さくらんちゃんは少しずつみどりの葉っぱが目立ち始めていた。それでも、美しかった。やっぱり大好きだ。
「さくらんちゃん。おはよう。」
返事はない。でももう予想はしていたから悲しくない。さくらんちゃんはゆらゆらと体を揺らした。
「大好きだ!」
ぼくは叫んだ。するとはなびらが舞い、それとともに1匹のちょうちょうが飛んだ。
「私も大好き!」
どこからか優しく甘い声がうっすらと聞こえた。
「めでてぇなぁ!」
空からガラガラの声が聞こえた気がした。ぼくはこぶしを空に向けた。遠くの空に真っ赤でおおきな傘が浮いていた。
「ありがとう。」
そして、 ぼくとさくらんちゃんの淡い桃色をした本当の恋が始まった。
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