朝焼け

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 私は地獄にいる。  家族とはこういうものなのだろう。  父は何かあれば私を暗い部屋に押し込め、木魚のように頭を叩きながらお経のように、お前が悪い、わかったか、と言い続けた。  母は暇さえあれば私に父の愚痴を漏らし、家の中で私に何があっても助けてくれなかった。  活発だった私は徐々になりを潜め、とにかく人の顔色や空気に敏感になり、父を不快にするようなことはしなくなった。友達にも気を使い始めると、友達は私の事がわからなくなって段々と不気味なやつとして扱われるようになった。  そしてあらかた友達がいなくなった頃に高校受験を迎えた。  受験のストレスは凄まじく、家では両親から圧力がかかるし、高校も決められないし、クラスは受験一色。クラスの皆はお互いに愚痴を言い合って心を支えていたけれど、私は独りだったから溜め込むしかなかった。  ある日、部屋で勉強していると消しゴムが折れた。なんともない事だと思う。  でもそれがキッカケになって、私も折れてしまった。  取るものもとらずに部屋を飛び出して、脇目も振らずに走って走って走った。  気付いたら小さな公園にいた。公園の名前を見ると、昔何度も遊びに来た公園だった。こんなに小さかっただろうか。  ふと誰かに肩を叩かれたような気がして振り返った。でもそこには誰もいない。気のせいか、と直ると、今度は頭を叩かれた気がした。  暗いものが胸を覆い吐き気にしゃがみこむと、途端にきたバケツをひっくり返したような衝撃に私は空を見上げた。
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