0人が本棚に入れています
本棚に追加
雨だ。
まるで空が泣いているかのように、淀んだ暗い空から無数の雨粒が落ちてきていた。
私はフラフラと立ち上がって、近くのベンチに腰を下ろした。
雨が降っている。私は濡れている。冷たい。寒い。雨が目にしみた。
視線を落として自分を見た。体育で着衣泳をした時、こんな感じだった気がする。
そんなことを考えていると、突然、身体をうつ雨の衝撃がやんだ。
ゆっくり顔を上げると、視界には鮮やかな赤色が広がった。
「ねぇ、大丈夫?」
その時初めて他に誰かいる事に気付いた。慌てて振り返ると、そこには綺麗な女の人が赤い傘を持って立っていた。
「あー、大丈夫じゃないよね。なんていうの、滝に打たれたみたいになってる」
彼女は微笑みながら私に話しかけた。突然のことに驚いて固まっていると、彼女は言葉を続けた。
「もしかして、修行の邪魔だったかな」
下手な冗談なのに、私は吹き出して、そのまま泣き出した。
「ありゃー、うーん、おー、そうだ。ウチ、すぐそこだから雨宿りに来なよ、うん、それがいいよ」
彼女は言うが早いか私の手を取って歩き出した。私は変わらず泣きじゃくっていた。
最初のコメントを投稿しよう!